「仮面ライダーアギト」に登場する怪人・アンノウンには、学名のようにラテン語の名前が設定されていました。「あらゆる創作のためのラテン語ネーミング辞典」(以下、本書)は創作に役立つラテン語を集めたものです。
一般的には使えない、だからといってダメじゃないラテン語
本書は「世界はラテン語でできている」の著者が手掛けたラテン語のネーミング辞典です。「創作者のためのドイツ語ネーミング辞典」と同じく一つの言語に特化したもので、キャラクターや武器、呪文などに応用がききそうな言葉が集められています。
知ってのとおり、古代ローマで用いられたのがラテン語。現代では会話に用いられる言語ではありませんが、ヨーロッパ系言語の原型ともいえるものであり、それは生物の学名や「魔術や錬金術ともゆかりの深い」(本書5ページ)言語として、多くの分野にまたがって用いられるほどの影響力があるのです。
チェンジ、レオパルドゥス!
動物の名前においてもヒョウを指す「レオパルドゥス」、ヤマネコの「リュンクス」のように、英語などにほぼそのまま用いられているラテン語は多いのです。中にはイカの意味「セーピア」は「『セピア色』のセピアの語源」(本書261ページ)のように変則的な使われ方もあります。
また、鉱物に関する言葉の「金の元素記号Auの由来」(同271ページ)「アウルム」や、星座や惑星の名称など、身近に耳にする言葉も少なくありません。ただアメジストを指す「アメテュストゥス」や真鍮を指す「オリカルクム」など、ギリシャ語を語源とする言葉もあります。
さあ、丘へ参るぞ!
地中海沿岸の大部分を支配するまでに拡大したローマ帝国。本書ではその始まりとなる地域「ローマの七丘」について言及されており、農業を主とする古代ローマ人が使った「ラテン語には(中略)自然に関する事柄から発展した単語が多い」(本書234ページ)のが散見されます。
それゆえか、本書には食べ物に関する言葉も収録されています。レンズ豆を表す「レーンス」が後の光学機器・レンズの語源になっていたり、乳を表す「ラク」が「偶然にも、乳飲料を表す日本語『酪』と同じ読み」(同178ページ)など意外性のある言葉もあり、親しみが湧くでしょう。
我思う、ゆえに我あり、というけれど
そんな素朴な言語であったラテン語も、後代になり知的職業の必須技能としてその筆記が求められました。証明終了を表す「Q.E.D」にしても「我思う、ゆえに我あり」のオリジナル「コーギトー・エルゴー・スム」(本書187ページ)にしても、その流れから生まれた言葉であり、ラテン語が上級言語のような扱いをされていたのがわかります。
ドイツ語と同じく「日本語に近いリズムと響き」(本書285ページ)を持ったラテン語は日本人にとって親しみやすい言語といえます。それもあって、ラテン語を知ることは現代用いられている言語よりも格調あるネーミングに応用できるだけでなく、他のヨーロッパ系言語の足がかりとなるでしょう。
「あらゆる創作のためのラテン語ネーミング辞典」ラテン語さん 著 川島思朗 監修 ホビージャパン 2750円(税込)