モンスターにされた生き物たち

 「古生物学者、妖怪を掘る」では、人間が正体不明のものにどのような知的探求心で姿を与えたのか、がテーマでありました。「モンスターにされた生き物たち」(以下、本書)はよく知られた妖怪や怪物と、そのモチーフとなった生き物を併記したものです。

モンスターにされた生き物たち 妖怪・怪物の正体とは?税込1,540(2026/05/25時点)

妖怪の正体見たり、な動物たち

 本書は「仮面ライダー昆虫記」の著者が、伝承に登場する妖怪や怪物、UMAまでも網羅してその正体を解明するものです。かつて人間たちは光のない夜に行動する生き物を、姿を判別できないながらも妖怪という形で認識していました。技術や学問が発展した現在、それらは正体が(ある程度)明かされてきたのです。

 本書ではその伝承と正体をイラストを交えて紹介、象の頭骨をサイクロプスと見なしたメジャーな解釈から現代においても判別不可能なものまで正体は様々であります。かつて姿が見えないものを水木しげるによるビジュアル化で知られた妖怪も多く、それらは往々にして既知の動物による鳴き声から想像されたものでした。

ムジナはタヌキかアナグマか、どっちなんだい!

 妖怪的な動物の代表といえば、キツネとタヌキ。本書でも扱われていますが、キツネよりタヌキのほうが解説多めな印象があります。ただ「恐ろしい『狸』のイメージは、中国から伝えられたヤマネコのものである」(本書046ページ)と、日本のタヌキにしてみれば濡れ衣もはなはだしい扱われ方であります。

 さらに人を化かすと言われた狢(ムジナ)は「アナグマの別名とされている」(同050ページ)と思えば「イタチやテンなども含めて『狢』と称していたらしい」(同)など様々な動物が当てはめられており、仕方がないとはいえ同じ呼称にしてしまったのは地方性によるものでしょうか。

人魚の正体、西洋はジュゴン、日本は?

 本書では日本の妖怪に限らず、西洋のモンスターにも言及されています。その中でも西洋の人魚がジュゴンの見間違いであるのは有名でありますが、「リュウグウノツカイが日本における人魚の正体」(本書178ページ)とし、かつてブームとなった人面魚にも触れています。

 とはいえクラーケンやシーサーペントの正体を「ダイオウイカとマッコウクジラが絡み合いながら戦う姿」(同183ページ)とするのはともかく、グリフォンの正体をプロトケラトプスの化石としたり、怪鳥ロックの卵を絶滅種・エピオルニスのものとするなど、西洋のモンスターに関してはロマンに欠ける解釈が見られます。

その正体を明かすのもいいけど、ロマンも欲しい

 本書の後半は未確認生物・UMAに関するもの。撮影上の光学現象であったスカイフィッシュ、ヒグマの翻訳間違いから生まれたイエティなど単なる勘違いを指摘する一方、「もしかすると…生体実験で人工的に生み出されたミュータントのアカゲザル」(本書227ページ)とチュパカブラに関する謎の可能性を提示していたりもします。

 やはり、恐れられた生き物の正体を明かして単なる間違いと一蹴するのは無粋というものでしょう。中国の龍を絶滅種のマチカネワニと考えるように、人間は理路整然とした解釈だけでなく、そこに至るまでのロマンを感じ取り、愛する生き物なのだから。

「モンスターにされた生き物たち」稲垣英洋 著 二見書房 1650円(税込)

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