ブライト・ノアの逆転マネジメント術

 「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」を見るにつけ、主人公ハサウェイの能力は父のブライト・ノア譲りなのではないか、とも思えます。「ブライト・ノアの逆転マネジメント術」はブライト・ノアに着目してそのマネジメント能力を分析する一冊です。


数々の戦場を生き延びたブライト・ノアの実力

 ブライト・ノアといえば「機動戦士ガンダム」において、19歳にして新造戦艦ホワイトベース(以下、WB)の指揮を任された士官候補生で、一年戦争を生き延びて以降「逆襲のシャア」まで前線に立ち続けたのは知ってのとおり。本書はその「卓越したマネージャー」(本書3ページ)としての実力を分析する一冊です。

 会社などの組織には、上層部と社員の間に挟まれる立場のいわゆる中間管理職が存在します。彼らは上層部から示された目標を遂行するため、部下に対して指針を示したり、個人のポテンシャルを引き出す能力が求められます。著者はその理想的な姿をブライトに求めているのです。

アムロ・レイと衝突することで、マネジメント力を身につける

 そんなブライトもはじめは緊急事態だったがゆえに、任務をこなせていたとはいえません。それを象徴するのは主人公アムロ・レイとの衝突。軍人ではない部下との付き合い方を知らないために起きた失敗でWBの危機を招くも、クルーのミライやセイラによるフォローもあって、結果的にブライトのマネジメント能力向上につながりました。

 その経験が生きたのか、以降のカミーユ・ビダン、ジュドー・アーシタ、バナージ・リンクスなどガンダムに搭乗する少年たちにはその人となりを知ったうえでモチベーションを与え、それに付随する戦果を引き出す助けになっています。ある意味でシリーズの主人公を育てたのはブライトなのかもしれません。

シャア・アズナブルをリーダーに据えて、グリプス戦役を乗り越える

 「機動戦士Zガンダム」でブライトは、クワトロ・バジーナと名乗るかつての敵シャア・アズナブルと共に連邦軍の一派・エウーゴに所属し、作戦を遂行していました。本書ではリーダーとマネージャーの役割を区別しており、組織の目標を設定し人員の意思をまとめるのがリーダー、その目標を実際に遂行するのがマネージャーとしています。

 先のグリプス戦役での状況ではシャアがリーダーに担ぎ上げられ、ブライトがマネージャーとしてその役割を分担する構図が見えてきます。理想を語るシャアと、それを実現するため実務をこなすブライト。結果的に行方不明となるシャアとは対象的に乗艦アーガマを守ったブライトはマネージャーとして円熟していたといえましょう。

マネジメントが間違っているぞ、何やってんの!

 先に述べた通り、本書はブライトを通してマネージャーに必要な能力を定義するビジネス書です。しかし現実にあってはブライトのような優秀なマネージャーは少なく、なりたがらない職業に挙げられる一因にもなっています。しかし、初期のブライトは反面教師として、シリーズ通しての彼は理想的なマネージャーとして、現実におけるマネジメントの参考になるでしょう。

 また、本書はシャアやアムロに比べて注目されることが少ないブライトの歩みを記した側面もあります。アムロを殴って開き直る初期の姿や「弾幕薄いぞ、何やってんの!」などのセリフのおかげで、どうしても嫌われ役の印象が強いブライトですが、それもマネージャーとしての苦労ゆえだったのかもしれません。

「ブライト・ノアの逆転マネジメント術」鈴木博毅 著 星海社新書 1375円(税込)

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