’80年代“超時空”シリーズプラモデル変遷記

 現在でも「超時空要塞マクロス」(以下、「マクロス」)「超時空世紀オーガス」(以下、「オーガス」)のプラモが複数メーカーから発売されていますが、もとを辿れば80年代のアニメ放送時に行き着きます。「’80年代“超時空”シリーズプラモデル変遷記」(以下、本書)は当時のプラモに関する一冊です。


複数のメーカーを引き連れて

 本書は1982年に放送されたテレビアニメ「マクロス」に始まり「オーガス」「超時空騎団サザンクロス」(以下、「サザンクロス」)までのいわゆる「超時空シリーズ」で発売されたプラモの情報とそれに関わった人物のインタビューで構成された一冊です。同シリーズの大きな特徴は、複数のメーカーによって同じ作品の商品化を行ったこと。

 「サンダーバード」メカのプラモで定評のあった今井科学(以下、イマイ)とパチモンガンプラ「ザ・アニメージ」を発売していた有井製作所(現マイクロエース、以下アリイ)が棲み分けながら発売した「マクロス」キットは「会社によって仕様が食い違い、統一感に欠けるシリーズ」(本書5ページ)ではありましたが、ガンプラブームに乗る形で人気を博しました。

1984年、ブームは終わった

 それにはメカデザイナー・河森正治、宮武一貴による立体化用設定画に基づいた模型化がプラスに働いていたのでしょう。主役メカ・可変戦闘機VF-1バルキリー(以下、VF-1)ではファイター、ガウォーク、バトロイドへの変形整合性よりも、最適なデフォルメを施した設定画をもとに各形態のキットを発売し、現在でも鑑賞に耐えうる立体を生み出したのです。

 「オーガス」キットでは主役メカ・オーガスを中心にしたイマイと、それ以外のメカも精力的に商品化したアリイ、メーカーによって商品展開に差が出てきます。「マクロス」時代に培った技術の向上が見られるものの、前作ほどのラインナップには至らない結果となりました。さらに1984年にはプラモブームが沈静化することとなります。

美プラのデ・ジャ・ヴー

 同年の「サザンクロス」になると主人公たちが装着する装甲服のキットがメインとなり、メーカーもエルエスが加わりながらメカはほとんど発売されませんでした。メインの女性キャラクターはヘルメットと素顔を選択できる仕様でしたが、中でもアリイ製のラーナ少尉は当時を代表する珍キットとして名を残します。

 「ロリコンを取り入れたボディ」のパワーワードとともに、装甲の一部を脱着可能ないわゆるキャストオフ機能を有し、ある意味アリイらしいトンデモ仕様となった同作。黒歴史とみなされるこれらを現在の美少女プラモ、いわゆる「美プラ」の源流とするのは乱暴にすぎるでしょう。

玩具・おぼえていますか

 結果的にシリーズ中で人気となったのは、放送延長されたうえ劇場版「愛・おぼえていますか」も制作された「マクロス」だけでありましたが、その原動力の一つである完全変形を実現したVF-1玩具の存在を忘れるわけにはいきません。本書ではその玩具と、第3のメーカーであるニチモ製プラモを巻末に収録しています。

 40年以上経って、かつてのイマイ製キットをリスペクトしたプラモが発売されるなど、超時空シリーズのキットはガンプラに負けないほどの影響を与えています。本書ではその礎となる河森の言葉「プラモデルでも玩具でも、(中略)違いが出たほうが面白い」(本書7ページ)に基づいた多様性がふんだんに感じ取れるでしょう。

「’80年代“超時空”シリーズプラモデル変遷記」ホビージャパン編集部 編 ホビージャパン 3630円(税込)

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