神移植&迷移植ガイド ファミコン編

 ファミコンブームの頃にはとりあえずアーケードゲームやパソコンゲームから移植された作品が多く、その中にはオリジナルと遜色のないものからかけ離れているものまで多様でありました。「神移植&迷移植ガイド ファミコン編」(以下、本書)はそんなファミコン移植ゲームを集めたものです。


ゲーム機にとって、移植ゲームはステータスだった

 本書は、ファミコン用に移植された数多くのゲームを「神移植」と「迷移植」に分けて紹介するものです。家庭用ゲーム機はファミコン以前からアーケードゲーム(以下、AC)などをモチーフとして専用ゲームを発売してきました。ハード性能の関係上オリジナルそのままとはいかないものの、それらはハードの売上に貢献したのです。

 それはファミコンも例外ではなく、発売当初は「ドンキーコング」「マリオブラザース」(スーパーに非ず)など自社製ACの移植作をメインにし、人気を博しました。しかし、レイアウトや面数の減少などオリジナルをそのまま再現できたとは言い難く、その落差は長らく家庭用ゲームの課題となっていきます。

技術力をとるか、面白さをとるか

 本書における「神移植」と「迷移植」の判断基準は曖昧なところがありますが、少なくとも神移植作品には、

  1. 極力オリジナルの再現を目指したもの
  2. 再現よりもゲームの面白さを追求したアレンジを施したもの

 が挙げられます。初期の移植作は1.に当たる作品が多く、特に「パックマン」「ゼビウス」などのナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)作品が目立ちます。ブームさなかには「ファンタジーゾーン」「エイリアンシンドローム」など移植を担当したサンソフトの技術力が発揮されたセガ作品も登場しました。

 その頃にはファミコンとACの性能差が明確となり、2.に当たる作品が目立ってきます。「グラディウス」「沙羅曼蛇」などコナミのシューティングゲームシリーズをはじめ、パソコンゲーム移植作「サラダの国のトマト姫」や、AC「ひげ丸」をベースに大胆なアレンジを盛り込んだ「魔界島」など、性能差をバネに生まれ変わった傑作が増えてくるのです。

クソゲーじゃないけど、コレジャナイ…

 さて迷移植の方はどうかというと、

  1. システム的に問題のあるクソゲー
  2. ゲームとしては遊べるものの、オリジナルとイメージが変わりすぎたもの

 があり、1.に関しては、

  • キャラクターの表示が増えると、画面がちらつくファミコンの性能を考慮しなかった「エグゼドエグゼス」
  • ビジュアルが少ない上、迷路要素を追加して難易度が上昇した「夢幻戦士ヴァリス」
  • 異常なまでの読み込みが最大の敵、「レリクス 暗黒要塞」

 など枚挙にいとまがありません。しかし問題なのは2.の方で、

  • 「ザナドゥ」の名を冠しながら、共通点はアイテム名とパッケージに使われたフィギュアの写真のみ!「ファザナドゥ」
  • 地球戦士ライーザ」をもとにしながら、永井豪によるキャラデザインと高橋幸宏の音楽でイメージを一新した「銀河の三人」
  • AC「トップシークレット」をアレンジしてタイトルも変更、「海外版としては『バイオニックコマンドー』という名称で知られている」(本書093ページ)あたり、問題ありか?「ヒットラーの復活」

 などゲームとしては出来が良いにも関わらず、印象が変わったおかげで評価が低くなってしまった作品が見られます。ユーザーの期待をコレジャナイ感で裏切った代償は大きいのでしょうか。

ゲームハードが溢れていた時代の移植作

 ファミコンが登場した80年代は、他社のゲーム機やパソコンなどゲームハードが群雄割拠していた時代でありました。それを象徴するゲームが「ディーヴァ」。「6機種のPC版ととファミコン版を加えた7つの物語で構成された」(本書061ページ)作品で、パスワードを使い機種をまたいで遊べる試みを行っていたのです。

 ゲーム機とACの性能差は90年代次世代機(PS1など)の登場により緩和されますが、それまでは同じタイトルのゲームでも中身が違うのは当たり前でありました。今にして思えばその格差こそがゲームの面白さを追求するきっかけになっていたのかもしれません。本書の神移植ゲームはその回答だとも考えられます。(Re)

「神移植&迷移植ガイド ファミコン編」マイウェイ出版 1222円

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