’80年代美少女フィギュア創世記

 40年前「フィギュア」といえばスケートかゲームの駒を指す言葉でありました。それが漫画やアニメのキャラクターを立体化したものの呼び名になったのは、ある人物の存在が大きいでしょう。「’80年代美少女フィギュア創世記」(以下、本書)はその当人による回顧録です。

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’80年代美少女フィギュア創世記 [ 秋山徹郎 ]
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美少女フィギュアを生み出した男の回顧録

 現在では、ガレージキットに限らずプラモでも美少女フィギュアが模型の1ジャンルを形成しているのは知ってのとおり。しかし80年代において活発化したガレージキットは主に特撮の怪獣やヒーローなどがモチーフであり、美少女フィギュアは著者たち一握りの人々が作っていたに過ぎませんでした。

 本書は、かつてフィギュアモデラーとして活躍し、後に「たまごっち」の開発に関わった秋山徹郎の半生記です。著者は実質的な日本初の美少女フィギュア原型師であり、それを商業活動としてガレージキットを発売した先駆けの人物でもあります。

始まりは吾妻ひでおのファン活動から

 とはいえ「当時のフィギュア作例はまったくもって稚拙なもの」(本書5ページ)と著者が語っているように出来は推して知るべしですが、当時多数のキャラクターを立体化して模型誌などへの掲載は前例がなく、以降のフィギュアブームの火付け役を果たしたのです。

 著者がフィギュア造形を始めたきっかけは、漫画家・吾妻ひでおのファン活動で作中キャラクターを立体化したことにありました。この時点で原型を作り、型取りして複製するガレージキットの基本的な制作法を用いていたのは驚愕に値します。

フィギュア専門サークル「OFF」と同人誌

 80年代当時、ガレージキット制作のために使われるパテやシリコンゴム、レジンキャストなどの素材は存在していたものの、(今でこそネット上に転がっている)入手や使用法の情報はほとんどなく、個人での試行錯誤や同好の士からの情報交換で行われる手さぐり状態でありました。

 その状況に風穴を開けたのが、著者が所属していたフィギュア専門サークル「OFF」が制作した同人誌「OFF WORK BOOK2」だったのです。「普段使っている造形材料や工具をレビューしてまとめた」(本書109ページ)同誌はコミケに出品し、大ヒットを叩き出しました。

フィギュアは本物になり得ない、が…

 著者の辿った道筋はフィギュアという表現形態の始まりと、それがアニメ・漫画ファンのニーズに合ったビジネスになる過程を示しています。それは「アニメ・漫画系フィギュアがメジャーなものになる世界」(本書176ページ)を目指した個人的な思いから始まったのでした。

 その思いは現在でも変わらず、フィギュアに関わる著者。「三次元のフィギュアは、(中略)本物のアニメや漫画の絵と完全イコールにはなりません」(同175ページ)との弱点を知る一方、それゆえの面白さと可能性を追求してきた半生が本書には込められています。

「’80年代美少女フィギュア創世記」秋山徹郎 著 ホビージャパン 3630円(税込)

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