その名を知らなくても、「ファミコン通信」で描かれた独自の似顔絵を憶えている人は多いでしょう。「荒井清和40thキャラクターズ」(以下、本書)はその作者である荒井清和の、これまでに描いた仕事を収録した作品集です。
すぽーん!荒井清和の作品集だぜーッ!
本書はゲーム雑誌「ファミコン通信」(以下、「ファミ通」)やパソコン雑誌「ログイン」で連載された4コマ漫画「べーしっ君」の作者で、ファミコン版「オホーツクに消ゆ」のキャラクターデザインなども担当した荒井清和の、デビュー以降40年に描かれたイラストや漫画などを集めた作品集です。
著者の持ち味は「べーしっ君」における「すぽーん!」などの擬音でオトす脱力系のノリと思われるかもしれません。しかし、当時のロリコンブーム系統とは一味違う描き方の美少女キャラもその魅力の一つであり、本書はそちらの比重が高い印象があります。
まぼろしの森下万里子
さて、「ファミ通」の名物といえばゲームを編集者たちがレビューする「クロスレビュー」でありましょう。そこに描かれたメンバーの似顔絵を担当したのが著者。本書でその一覧を掲載しており、「198Xのファミコン狂騒曲」の著者・東府屋ファミ坊もその一人であります。
その中の一人、森下万里子は数少ない女性レビュアーとしてアイドル的な人気を博しましたが、その実態は(八手三郎と同じく)架空の人物でありました。著者による彼女を成立せしめるために描かれた数々のイラストが本書に収録されており、作品では多くの割合を占めます。
知られざる作品と来歴
そんな著者の来歴を探るように、本書には「ファミ通」「ログイン」時代の関係者との座談会が収録されており、様々な紆余曲折を経てホームとも言える職場にたどり着いたのかが明かされます。漫画家を目指しながらも目が出ず、結果的に雑誌のビジュアルを担当してそのイメージカラーを決める大事な役割を果たすまでの経緯を俯瞰できるでしょう。
巻末には幻のデビュー作が(サイズは小さいけれど)収録されています。バレーボールを題材にしたスポ根もので、80年代らしさの中に現在のカラーがうかがえ、当時のノリが以降の作品にフィードバックされているのがわかります。
気がつけばセクシーなネタが多く…
「今回改めて収録したらエロいやつが多かったですよね?」(本書33ページ)との指摘があったように、本書の内容(特に漫画)はセクシーなネタが多めです。掲載誌の関係もあったとはいえ「ほのかな色気を出そうとしてるんですよ」(同)と、著者なりのこだわりがあるのでしょう。
ともあれ、著者の仕事をまとめたものとしては本書が最新であります。ゆるさの中に真面目さが同居している著者のスタイルを知る「こういう本が出ていなかったのが不思議なくらい」(同161ページ)の一冊と言えましょう。
「荒井清和40thオールキャラクターズ」荒井清和 著 新紀元社 3850円(税込)