バンダイゲーム機パーフェクトカタログ

 NHKの番組「神田伯山のこれが我が社の黒歴史」では、失敗に終わったゲーム機・ピピンアットマーク(以下、ピピン@)の経緯を同社製品のガンプラを使って紹介していました。「バンダイゲーム機パーフェクトカタログ」(以下、本書)はそんなバンダイ製ゲーム機を網羅したものです。


バンダイの黒歴史を掘り起こせ

 本書は80年代にガンプラブームで大発展した玩具メーカー・バンダイ(現・バンダイナムコエンターテインメント)が開発した家庭用ゲーム機を集めたものです。バンダイは70年代後半から80年代前半のテレビゲーム黎明期から家庭用ゲーム機を販売し、その地歩を固めていました。

 しかし83年にファミコンが登場し、ゲーム機市場がファミコン一強になると、ソフトメーカーとしてファミコン用ソフトを提供していきます。以降も事あるごとにゲーム機を開発しながらも市場に食い込めないサイクルを繰り返し、その歴史は(アニメ「ターンエーガンダム」で言うところの)「黒歴史」と呼ばれても仕方のないものであります。

ビフォーファミコンのゲーム機たち

 アーケードゲーム「スペースインベーダー」が日本中を席巻した77年、バンダイは家庭用ゲーム機「TV JACK」シリーズを発売します。中身は世界初のテレビゲーム「PON」の延長線上だったものの、後続機種ではカートリッジ式のソフトや分離式のコントローラーなど、後のファミコンに見られる仕様が見受けられました。

 ただ時代が早すぎたのか、普及するまでには至らなかったそれらに変わり、バンダイは海外のゲーム機を輸入、日本版にローカライズして販売する戦略を取り始めます。ファミコンの対抗馬として売られたそれらの中でも「光速船」の名称で発売されたモニター一体型のゲーム機は、価格、使用、販売方法いずれも規格外のゲーム機として歴史に名を残しました。

見せてもらおうか、バンダイ製の(以下略)

 80年代初頭は、家庭用ゲーム機と並行してホビーパソコンが生まれた時期でもあります。それらはゲームもできるパソコンとして家電メーカーがホビーパソコンを発売する一方、玩具メーカーが同様の商品を開発するなどパソコンに関しては互いの垣根が低い時代でもありました。

 そんな中バンダイは「機動戦士ガンダム」からその型式番号を冠したパソコン「RX-78」を開発します。カートリッジスロット、低価格を打ち出した同機はMSXに通ずる仕様でありましたが、MSXのような共通規格でもなく「商品名のおかげでオモチャ扱いされる」(本書143ページ)面も災いし、短命に終わってしまいました。

 それと並行して遊ばれていたのがLSIゲーム。携帯ゲーム機の遥か以前に、コンパクトな本体でどこでも持ち歩けたそれらは任天堂の商品がヒットして以降、各社こぞって開発競争が進みました。バンダイも例外ではなく、強みである各種キャラクターを用いた商品で数を揃え、玩具メーカーらしい筐体の工夫が見られます。

飽くなきバンダイのチャレンジ精神

 平成に入っても、バンダイは先のピピン@や、マルチプレイヤーを目指しながら一部の声優ファンにしか訴求しなかった「プレイディア」、LSIゲームの系譜に連なる(?)携帯ゲーム機・ワンダースワンなど各種ゲーム機を開発していきます。成功を収めたとは言い難いラインアップではあっても、その資産は「たまごっち」人気の糧となったわけです。

 セガともどもなにかと過去をあげつらわれるバンダイではありますが、ガンプラにとどまらない多様性を勝ち得たのは本書の内容に代表されるチャレンジ精神にあったのではないでしょうか。(Re)

「バンダイゲーム機パーフェクトカタログ」前田尋之 監修 ジーウォーク 2640円(税込)

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