昭和に放送された矢追純一によるUFO番組は、幼少期のトラウマになっております。今にして思えばそれまでのUFO情報のまとめとして有用であったかもしれません。「イラストで見るUFOの歴史」(以下、本書)はそんなUFOと人間の関わりをまとめた一冊です。
イラストで見る UFOの歴史税込1,870円(2024/04/14時点)いるか、いないかの問題ではない
(本記事では本書に習って「宇宙人」を「異星人」と表記する旨、ご了承の程を)
本書は、著者によるフラットなイラストでUFOと人間の関係を綴ったものです。UFOを扱った書物ではそれが存在するか否かが重要視されがちですが、本書ではどちらにも与さないスタンスで記述されており、いわゆる異星人のイメージは不気味なものが連想される中、イラストの絵柄のおかげでその印象は薄まっています。
空を飛ぶ正体不明の物体は有史以前から目撃されており、時代によって天使や妖精など様々な解釈がなされてきました。少なくとも何かが空を飛んでいることは間違いないわけですが、現代のように異星人の乗り物と判断してしまうのは、その歴史からすれば早計といわざるを得ません。
UFOが異星人の乗り物となるまで
さて、「UFO」という言葉が広がり始めたのは戦後のアメリカであり、1947年にケネス・アーノルドが未確認飛行物体を目撃してから「空飛ぶ円盤」と報道され、米軍の調査の中で「UFO」の略称が生まれることになります。その間にも民衆の間ではUFOが異星人の乗り物だ、という認識が定着しつつあったのです。
それには戦前からSFが読まれたことと無縁ではないでしょう。ウェルズ原作「宇宙戦争」のラジオドラマが大騒ぎになったように、「地球以外の天体に人間と同等(もしくはそれ以上)の知性体が住む」という概念は戦後に一般化しており、「異星人と対話をした」と話すアダムスキーのような人物を輩出するには十分だったといえます。
3mの宇宙人ver.2.0
さて、本書にはいわゆるUFOの姿やそれと見間違えられた物体(戦闘機も含む)が図示されると同時に、先に述べた通り異星人の姿をイラスト化しています。その中には映画などで作られた異星人をまとめて紹介しており、パイラ人(岡本太郎デザイン!)やミステリアンなど日本特撮映画に登場したものも含まれます。
想像上の異星人と実際に遭遇した異星人に相関関係はあるのか、と思われるかもしれませんが、ヒル夫妻が異星人にさらわれた、とされる有名な事件では「SFテレビシリーズの『アウター・リミッツ』のエピソードに、二人の話と驚くほどそっくりな異星人が登場していた」(本書55ページ)とあり、決して偶然とは言い切れない部分があります。
また、「3mの宇宙人」の名で有名なフラットウッズ・モンスターが本書では最新の解釈にのっとったメカニカルな姿で描かれているのはマニア心をくすぐります。
UFOよ、神話になれ
現代になってもUFOに関する情報はネット上でインチキが暴かれる反面、それ以上に怪しい情報が溢れており、米軍が未確認飛行現象(UAP)と改称するほどに、UFOというものは現代の神話になってしまったのかもしれません。
それでも、空には人間に説明のつかない何かが飛んでいることは事実で、「伝説と異端だらけの航行不能な湿地に囲まれているこの主題」(本書で116ページ)を、著者のようなフラットな目線で突き止める人物が登場することを願ってやみません。(Re)
「イラストで見るUFOの歴史」アダム・サッチ・ボードマン 絵と文 ナカイサヤカ 訳 マール社 1870円(税込)
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