ドラゴン百景

 「ドラゴンクエスト」(以下、「ドラクエ」)の大ヒットにより、いわゆるヒロイックファンタジーが日本で一般的になってからはや40年。「ドラゴン百景」(以下、本書)はその中心的存在であるドラゴンに注目し、その変遷を辿る一冊です。


出たな、日本のドラゴン!(未完)

 本書は漫画、アニメ、ゲームなどに登場するものをメインに、日本におけるドラゴン像の歴史的な変化を見るものです。「ホビットの冒険」「エルマーのぼうけん」など、80年代以前にもドラゴンは児童向け文学に登場していましたが、TRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のルールブックに描かれたレッドドラゴンが、以降のドラゴン像に多大な影響を与えたのは疑いの余地がありません。

 本書に収録されている80年代和製CRPGのパッケージが「巨大なドラゴンに立ち向かう勇者」という構図で統一されている(「ドラクエ」も例外ではない)のがその証拠。それと同時に(TRPGのリプレイから始まった)「ロードス島戦記」などのライトノベルがファンタジーの重要な要素としてドラゴンを登場させ、「ラスボス級の強敵」というイメージを広げました。

ドラゴンは乗られ、狩られて、食べられる

 その一方で鳥山明作「Dr.スランプ」の扉絵に描かれた(当時プラモ化された)ドラゴンに騎乗するアラレちゃんなど、ドラゴンを味方や相棒として扱う流れも現れました。特にゲーム「スペースハリアー」「パンツァードラグーン」においてはドラゴンとともに空を飛ぶ臨場感が表現され、憧れのシチュエーションを具現化したといえるでしょう。

 時は下って2000年代、ゲーム「モンスターハンター」の多人数でモンスターを狩るプレイスタイルは、かつてのドラゴン退治を彷彿とさせる遊びを提供し、再び討伐する相手としてのドラゴンを描く作品が見られるようになりました。中には「ダンジョン飯」のように倒したドラゴンをいかに美味しく食すか、を描いた作品もあります。

ドラゴンが可愛くたって、いいじゃないか

 また「ドラゴンハーフ」から「小林さんちのメイドラゴン」に至るまで、ドラゴンと美少女を組み合わせた作品も連綿と作られ、融合、変身、転生など様々な形でドラゴン美少女が生まれました。しかし遡れば西洋のメリュジーヌ伝説や龍神の娘である「浦島太郎」の乙姫まで、ドラゴンと女性の融合はさほど新しい試みではないのです。

 同時にドラゴンの幼生や小サイズ種など、マスコットキャラクターとしてのドラゴンも登場します。その際には犬や猫などの実在するペットを意識したディテールが施されることが多く、「強さ、邪悪さというキーワードを反転させて優しさや癒やしへ」(本書108ページ)変化するドラゴンの姿が見られます。

ドラゴンは敵かな、味方かな?

 もちろんこれらのドラゴンが日本独自というわけではありません。それらには西洋の伝説やSF、ファンタジー小説などの下地があり、日本サブカルチャーのフィルターを通したことで独自の進化を促された、という側面を認識すべきでしょう。

 いずれにしろ、ファンタジーにおけるドラゴンは「敵になると厄介だが、味方にすれば頼もしい」という共通したイメージがあるように感じます。(強大な力を持った存在としては同じながら)かつての怪獣と並んで、恐怖とあこがれを抱く対象として現在まで人々に愛されてきたのは間違いないでしょう。

「ドラゴン百景」朱鷺田祐介 著 グラフィック社 2640円(税込)

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