大枚はたいて手に入れた道具なら、無駄にはしたくないもの。エアブラシもそんな道具の一つではないでしょうか。「エアブラシがうまく塗れないんですけど!?」(以下、本書)はエアブラシをよりよく使うための情報を盛り込んだ一冊です。
エアブラシは簡単なようで難しい
本書は模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」の特集記事を単行本化したものです。模型を塗装する際に必要な道具は筆と並んでエアブラシがありますが、スプレーとは違い多彩な塗装ができる分、使いこなすにはある程度の修練が必要となります。
本書はエアブラシを使用する際につまづきやすい箇所とその解決法を中心に、ハンドピースやコンプレッサーなどエアブラシを構成するユニットの選び方まで網羅し、「エアブラシ塗装の本当の奥深さ」(本書3ページ)を指南する一冊です。
6つの要素を調整すべし
さて、「エアブラシでうまく塗れない」とはどういう状態を指すのか。本書では2種類のパターンを紹介しています。「たれる、飛沫が飛ぶ、ノズルがつまる」「ツヤが出せない/消せない、色が揃わない」(本書17ページ)のには、おのおの別の理由が考えられるのです。
それはエアブラシにおける変化する要素(本書では「可変パラメータ」)の組み合わせで起き、
- ノズル口径
- 塗料濃度(希釈率)
- エア圧
- ニードル引き量
- パーツとノズルの距離
- ハンドピースを動かす速度
(以上、本書18ページ)の増減によって塗装の質が左右されます。そのどれに問題があるのかを認識し、改善することが失敗を防ぐ第一歩なのです。
君たちは、何をどう塗りたいのか
先の要素のうち4つはユーザーでコントロールできるものですが、ノズル口径とエア圧に関しては購入する段階である程度決まってしまいます。本書ではハンドピースとコンプレッサーに関して「まずは自分が(中略)どういうふうに塗っていきたいのか、をはっきりさせること」(本書50ページ)という観点で解説していきます。
本書では模型のジャンルごとにハンドピースのおすすめを紹介、コンプレッサーにはエア圧だけではなく静音性能も求められる条件の一つであり、用途によって機種を紹介する簡易的なカタログの役目も果たしています。いずれにせよ漫然と購入するのではなく、自らの目的に合わせて選ぶのが大事であります。
口を酸っぱくして何度でも語ろう
本書以前にもエアブラシに関する書籍は定期的に刊行されてきました。性能的な進歩はあるにせよ基本的な構造や使用法は変わらず、それゆえに同じような情報を盛り込む結果になります。本来繊細な作りのため慎重に扱わなければならない道具なので、その情報は何度でも伝えなければなりません。
あくまでも本書は塗装の失敗原因を解決するためのもので美麗な塗装例などは掲載していませんが、少なくとも失敗例は豊富にあるため、その点においては従来のエアブラシ書とはまた違ったアプローチで普及を促す一冊になっているのではないでしょうか。
「なぜかエアブラシがうまく塗れないんですけど!?」森慎二 著 大日本絵画 3300円(税込)