宇宙船談話室

 今でこそ映像作品で「特撮」と呼ばれる撮影工程は欠かせない要素となっていますが、かつて「特撮」を記録に残したメディアは児童書か特撮専門誌「宇宙船」しかありませんでした。「宇宙船談話室」(以下、本書)は同誌の連載記事を単行本化したものです。

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特撮専門誌の1コーナー、復活

 本書は1980年に創刊された特撮専門誌「宇宙船」で1995年から10回に渡って連載された記事をまとめたものです。同誌の編集長を務めた村山が聞き手となって特撮に関係した人物を呼び、その談話を記録したこのコーナーはその人となりを知る貴重な手がかりでもあります。

 雑誌刊行ペースの変動ゆえ90年代後半までの連載になりますが、この時期は日本特撮の世代交代が顕在化した局面に当たります。対談相手の顔ぶれを見ると、昭和に活躍した世代と平成を代表する人物、それに「宇宙船」にゆかりのあるメンバーもおり、当時の状況がうかがい知れる一面があります。

日本特撮のレジェンドたち

 そんな昭和に活躍した人物には「ウルトラマン」でデビューしてから特撮作品の脚本を書き続けた上原正三、「仮面ライダー」に代表される数々の音楽を担当した菊池俊輔、「うしおそうじ」のペンネームを持つピープロの社長・鷺巣富雄(作曲家・鷺巣詩郎の父)など、有名なクリエイターがいます。

 さらに東映作品の主要な特撮を特撮監督・矢島信男、「仮面ライダー」や実写版「悪魔くん」などでプロヂューサーを務めた平山亨など、比較的裏方の立場にいたレジェンド的な人々にも話を聞き、主に聞き手との関わりから現在の仕事に至る経歴などを語ってもらっています。

ファンから始まった特撮新世代

 先に述べたとおり、特撮を支える人材の代替わりは90年代において顕著になります。彼らはかつて特撮作品を見て育った世代で、ファンが高じて現場に足を踏み入れる場合が多かったようです。その一人として「宇宙船」の表紙イラストを担当したイラストレーター・開田裕治に話を聞いています。

 また、現在では「牙狼〈GARO〉」シリーズの生みの親である雨宮慶太も、当時は「ゼイラム」や「人造人間ハカイダー」などを監督し、新進気鋭のクリエイターとして活躍していました。そして「宇宙船」の前身であるムック「ファンタスティックコレクション」を編集した池田憲章は特撮ファンの代表であり、特撮の情報を届ける第一人者として本書でも語っています。

「宇宙船」の航路はどっちだ

 本書の最後には、単行本化に合わせて初期の「宇宙船」を支えた人物達による談話が収録されています。これまでの談話では、聞き手と近い立場の相手だったため「話の半分しか載せられなかった」(本書167ページ)のが反省点とされていましたが、それだからこそ聞けた内容も少なからずあります。

 また「宇宙船」の歩みについても併録されています。情報に乏しかった時代に生まれた同誌が45年経ち、映像作品に特撮が深く入り込み、特撮に関する情報があふれたタイミングで出版された本書は、特撮に、また同誌にいかなる存在意義を見出すべきなのかを見直す役割があるのかもしれません。

「宇宙船談話室」村山実 聞き手 宇宙船編集部 構成 ホビージャパン 1540円(税込)

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