ほぼ半世紀前に起きたオカルトブームは、様々な不思議話を日本にもたらしました。しかし、それらは本当だったのでしょうか?「新・トンデモ超常現象60の真相(上・下)」(以下、本書)は超常現象と呼ばれるそれらを検証したものです。
もはや懐かしい、不思議の謎を解かねばならぬ
本書はUFOや超能力など、いわゆる超常現象の実像を解き明かしたものです。古くから言い伝えられていた(とされる)ものからごく最近のものまで、一度は聞いたことのある不思議な話を「伝説」と「真相」に分けて解説しており、そのほとんどは70年代の児童書でまことしやかに語られたものです。
しかしその実態は伝説とかけ離れたものであり、本書の中で著者(加門)が現地へおもむいて関係者に取材するなどの努力のもと、明らかにされたものも少なからずあります。もちろんすべてが解明されたわけではありませんが、少なくともかつて流布された伝説の認識が一変するのは間違いありません。
オーパーツやUMAも実は…
発見された年代の技術では作るのが難しいとされる工芸物、それがオーパーツ。その代表的なものが水晶製の頭蓋骨いわゆる「水晶ドクロ」でありますが、古代マヤ文明の作どころか「19世紀に欧州で製作されたもの」(本書上31ページ)であり、平たくいえばインチキと認識せざるを得ません。
「日本の漁船がニューネッシーを捕獲した!?」(本書下105ページ)との話は、70年代当時ニュースになったものです。しかし「腐敗したサメということで一致をみていた」(同109ページ)わけで、わかってしまえば常識的な結末だったといえるでしょう。
インチキだからって、泣くんじゃない
有名なUFO絡みの事件や霊能者、超能力者にしても、その中身はホラ話と勘違い、そしてインチキが横行する世界でありました。だからといって著者たちはそれらを否定するものではなく「むしろ超常現象が大好きで、(中略)その真実をより深く知ろうとして調べている」(本書上5ページ)結果に過ぎません。
本書で調査された「うつろ船」の伝承や「四谷怪談」にしても、伝承をもとに作家たちによる脚色と説得力をもたせるリアリティの付与によって形つくられたもので、エンターテイメントとして民衆が求めた物語が独り歩きしたゆえの伝説でありました。そこに真偽を問う必要はもはやないのです。
いいないいな、人間ってヘンだな
エンタメと割り切るならばテレビの超常現象特番も楽しめるものですが、少なくとも70年代当時は本気にしてしまう人も少なからずいたと思われます。だからこそ「とっくの昔にその嘘や間違いなどが暴かれている話を、いつまでも(中略)信じていなければならないという法はなかろう」(本書上5ページ)という主張のもと制作されたのが本書なのであります。
とはいえ、本書の中では超常現象の聖地となった場所で(まち起こしの側面もあるにせよ)伝説を名物にしているのがよく見られます。不思議なものを不思議なものとして信じたいという心理は、人間の奥底に拭い難いものとして存在しているのかもしれません。
「新・トンデモ超常現象60の真相(上・下)」皆神龍太郎・志水一夫・加門正一 著 彩図社 712円(税込、上・下とも)