特撮に見えたる妖怪

 「夏目友人帳」「妖怪ウォッチ」など、妖怪を扱ったアニメやゲームは記憶に新しいところですが、かつて特撮番組に妖怪で溢れていた時期があったのをご存知でしょうか。「特撮に見えたる妖怪」(以下、本書)は、特撮番組に登場する妖怪に絞ってその歴史を綴った一冊です。


妖怪と特撮の深い関係

 本書は、特撮番組の歴史で連綿と続く妖怪モチーフについて考察したものです。特撮番組で妖怪が扱われた歴史、その番組における妖怪の解釈などで構成されており、戦前まで遡るその端緒を開いたのは特撮映画においてでありました。特殊効果を存分に発揮できるモチーフに幽霊や妖怪が選ばれたのは当然の成り行きであったでしょう。

 ことテレビ特撮に関していえば、1966年に放送された水木しげる原作の実写版「悪魔くん」がその嚆矢となります。「ゴジラ」「ウルトラマン」などが切り開いた怪獣ブームに乗る形で巨大化した妖怪が暴れる姿は、後の「ゲゲゲの鬼太郎」(以下、「鬼太郎」)につながる妖怪ブームの礎となり、特撮における妖怪の定番化にも繋がりました。

怪人の定番モチーフ、妖怪

 70年代になると「仮面ライダー」に始まる等身大ヒーローのブームとカラーアニメ版「鬼太郎」の放送により、敵として妖怪が登場する作品が出てきます。「快傑ライオン丸」「変身忍者嵐」など、時代劇を舞台とした作品や、「アクマイザー3」「超神ビビューン」などオカルト風味の作品にヒーローと妖怪モチーフの怪人が戦う構図が見られました。

 平成になると、スーパー戦隊シリーズの中でも和風テイストな「忍者戦隊カクレンジャー」「侍戦隊シンケンジャー」などで現代的なアレンジを施された妖怪たちが現れます。令和になっても「仮面ライダーガッチャード」で妖怪と思われていた存在が錬金術で作られた生命・ケミーだった、というエピソードがあったりと、巻末の資料編を見れば妖怪モチーフが現代まで連綿と続いているのがわかります。

水木しげるか、それ以外か

 そんな現在まで続く妖怪の成立には、水木しげるの存在が大きな比重を占めます。民俗学者・柳田國男の著作から「姿なき妖怪たちに形を与えた」(本書168ページ)水木はさらに、妖怪を描いた江戸時代の画家・鳥山石燕の著作から改めて自らのキャラクターとして作品に登場させ、それらは画集などで子供に広がりながら日本の妖怪像に大きな影響を与えたのです。

 妖怪がブームとなれば、水木が手掛けた以外の妖怪も現れます。70年代の佐藤有文著「いちばんくわしい日本妖怪図鑑」(以下、「いちばんくわしい」)などに代表される児童書には、同じく鳥山石燕の作品を参考にしながらも「びろーん」「はらだし」などオリジナルの妖怪が散見されました。とはいえ、水木による妖怪にも「百目(ガンマー)」「バックベアード」など創作の度合いが高いものがあり、特撮の妖怪はそれらをひっくるめて参考にしていたわけです。

特撮と妖怪の親和性は高い

 本書の最後には作家・京極夏彦の言葉が添えられており、「“妖怪”は怪獣ブームに乗っかって(中略)定着したのだが、何のことはない、最初から両者は兄弟のようなものだったのだ」(本書277ページ)と、いずれも特撮を介して広まった存在であり、親和性が高いのも当然だ、としています。

 本来同人誌から始まったゆえかまとまりを欠く部分がありますが、本書は「いちばんくわしい」を彷彿とさせる表紙で当時の妖怪ブームをなぞるように、(京極の指摘通り)妖怪と特撮の関係という視点で考察されたありそうでなかった一冊でしょう。

「特撮に見えたる妖怪」式水下流 著 文学通信 2200円(税込)

One thought on “特撮に見えたる妖怪

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です