昭和の児童書には、独特の雰囲気があります。中にはでたらめな情報もまことしやかに掲載されていたものでした。「タローマンなんだこれは入門」(以下、本書)は昭和の児童書を模したフォーマットで令和のでたらめな番組を解説したものです。
べらぼう過ぎて、なんだか分からない
本書は2022年にNHKで放送された番組「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」(以下、「タローマン」)をもとに、その設定を掲載したものです。「タローマン」は昭和特撮番組の体で作られた作品で、それを意識した昭和児童書のフォーマットで書かれているのが特徴であります。
芸術家・岡本太郎の思想を具現化した巨人・タローマンが、同じく怪獣(本作では奇獣)となった岡本の作品とでたらめな戦いを繰り広げる、という内容の「タローマン」。本書も本編に負けず、濃いめの絵柄で描かれた口絵や図解など、べらぼうな物量で楽しませてくれます。
内部図解は基本です
怪獣図鑑といえば、内部図解は欠かせません。本書でもタローマンはもちろん、多くの奇獣の内部図解が掲載されています。(本編でおなじみ)タローマンの図解や奇獣「駄々っ子」などの他に、最終回に登場した奇獣「太陽の塔」の図解では「むかし鳥だったことが骨かくからわかる」(本書50ページ)など、でたらめな記述が満載なのです。
また、「タローマン」が全30話の設定なので、奇獣図鑑には「水差し男爵」や「座ることを拒否する椅子」など本編には登場しないものもあり、全話リストとならんで「なんだこれは?」となることうけあいです。さらに特番「タローマンヒストリア」(以下、「ヒストリア」)で紹介されたパイロット版とされる「太陽仮面サンタワー」や前番組「大権威ガ・ダーン」なども登場、ますますでたらめさを感じられるでしょう。
あの監督絶賛?名エピソード
本書では特撮の種明かしや着ぐるみの作り方など、実践的なコーナーも当時のノリで掲載していますが、漫画版「タローマン」もあります。登場する奇獣「未来を見た」に口があったり、タローマンが胸の目と会話していたりと、本編との違いがあるのがいかにも当時のコミカライズらしさ。
また、23年の「帰ってくれタローマン」で放送され、「ヒストリア」で特撮監督・樋口真嗣が語っていた奇獣「重工業」が登場するエピソードを絵物語形式で掲載、重要人物である五里博士の扱いなど、これまた本編と違った展開で楽しませてくれます。
昭和の大百科は、でたらめだった
先に述べた通り、昭和の児童書にはオカルトや実用的な情報にも胡散臭いものが多く、今にしてみればデタラメな作りになっていました。本書のノリはそれを踏襲しており、(当の出版社の一つである小学館が出していた)入門百科シリーズを模したレイアウトが当時を感じさせます。
このノリを知る人はもうアラフィフ以上とおもわれますが、知っている人はその元ネタを探してみたり、知らない人でも「タローマン」のムック本として楽しめる一冊として「そのインチキなノスタルジーを楽しんでいただけたら幸いです」(本書143ページ)。(Re)
「タローマンなんだこれは入門」藤井亮(豪勢スタジオ)著 小学館 3300円(税込)