プラモを完成させることに重きを置くあまり、工具のことをないがしろにしていませんか。また、エアブラシを我流で使っていませんか。「新・モデルテクニクス」(以下、本書)はそんな観点から模型製作を見直す一冊です。
プラモはあまり出てこない模型製作の指南書
本書は、模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」の特集記事を単行本化したものです。同誌では製作環境に関する記事を定期的に掲載していますが、本書は2018年から2021年までの最新版となっております。その内容は、
- 最新素材や工具
- 工具のメンテナンス
- エアブラシの基礎知識
となっており、プラモそのものはあまり出てこないものの、そのために必要なアイテムや知識を横断する一冊となっています。ちなみに本書のタイトルは、かつて連載されていた模型のノウハウをまとめたコーナーの単行本から引き継ぐ形になっております。
君の工具たちは輝いているか?
模型製作で大事なのが工具。良いものを手に入れ、メンテナンスを欠かさなければ一生現役で使えるものです。本書ではニッパー、金属ヤスリ、そして塗装に必要な筆と塗料の保管も含めてメンテナンスについての解説を掲載しています。
「金属、とくに鉄製工具で避けては通れないのがサビと摩耗の問題」(本書43ページ)とのとおりニッパーやヤスリではサビを防ぐことが第一。また、消耗品として捉えられがちな塗装用の筆は「特に高級な獣毛の筆は人の毛髪と同じでケアがとても重要」(同51ページ)であり、筆用のトリートメントアイテムを使い長持ちさせる方法を紹介しています。
エアブラシの扱いを間違えていないか
特にメンテナンスが重要になる道具といえば、エアブラシ。そのハンドピースは塗装後、毎回の清掃が必要ではありますが、それでも不調の時には専用のメンテナンスグッズを用意して分解清掃を行わなければなりません。本書ではその工程を詳しく解説、しなくて済むに越したことはありませんが、知ってて損はないでしょう。
ハンドピースには大きく2種類あり、シングルアクションとダブルアクションに分けられます。一般的なのはダブルアクションで、比較的安価なシングルアクションがそこに登らないのはなぜなのか。初心者向けとして勧められるのはダブルアクションで「操作が簡単で手間が少ないから」(本書68ページ)との理由は意外と知られていないのです。
技術革新の恩恵を受けよう
プラモ用の工具と素材は日々進歩しています。時代の流れと並行して瞬間接着剤やマスキングテープはもちろん、ラッカー系に引けを取らない水性塗料、パーツを脱着するため使われるネオジム磁石など、本書ではその概要を紹介、模型制作のハードルがだんだん低くなるのが感じられます。
ともあれ、これからも変わる部分と変わらない部分が共存しながら模型製作は行われていくわけで、これまでのやり方を見直す意味でも、または使えそうな新たな技法を見つけるためにも、本書を開いてみるもの良いのではないでしょうか。
「新・モデルテクニクス」モデルグラフィックス編集部 編 大日本絵画 3850円(税込)