漫画家にとって締切は守るべきもの。しかし、それがままならないのも事実。そのせめぎあいの中で傑作が生まれたりすることもあるのでしょう。「締切と闘え!」(以下、本書)は、とある漫画家の体験をもとにその付き合い方をつづったものです。

君は、自分の締切を知っているか
本書は「燃えよペン」「アオイホノオ」などを代表作とし、「機動武闘伝Gガンダム」のキャラ原案や「爆上戦隊ブンブンジャー」などで怪人デザインを担当した漫画家の著作です。その漫画作品と変わらない熱い言葉で「人生には締切がある」(本書はじめに)をテーマに仕事術やその半生を語っていきます。
「締切があると、その『最優先』をちゃんと頭の中で整理できるんです」(本書8ページ)とその有用性を解く著者。限りある人生で何をすべきなのか、その締切にどう立ち向かっていくのかを自分の失敗例をもとに、はたからみると喜劇にも見える生き様で示してくれます。
締切は守るべきだが、時には破ってしまうこともある
漫画家として人生を歩み始めた著者は、常に締切を突きつけられる生活に直面します。若さに任せて仕事を受け続けた末、締切を守れなくなりそうな窮地に陥ることもありました。それは「自分がどれだけのポテンシャルを秘めている人間なのかを見定める闘い」(本書50ページ)の始まりでもあります。
著者の場合、そんな逆境に追い込まれるからこそ生まれる「限界を超えた集中力」(同54ページ)が創り出した漫画が人気を博したりしたので、結果的にはプラスだったのでしょう。それでも一般的に締切は守るべきです。しかし、破らざるを得ない状況も出てしまうものであります。
「あえて…寝る!」の真実
本書には著者にとって最大のピンチだった事態、「燃えよペン」でも描かれた「あえて寝たときの話」(本書72ページ)が語られます。自分の都合を優先させた結果多大なリスクを負って以降、自分と向き合いながらスケジュール管理を見直すきっかけになったようです。
漫画家を続ける中、仕事の効率的な割り振りが板についてもスランプは訪れます。そんな中生まれたのが「アオイホノオ」。これと前後して故郷に戻り家庭を築く生活環境に移行、「家族との時間を犠牲にしないで漫画家をやったほうがいい」(同120ページ)との姿勢を確立していきました。
この命、燃え尽きないように生きて行こう
そんな本書巻末についている付録は、著者による締切に立ち向かうための言葉を集めたもの。
- 「大丈夫だ…できる!」{本書184ページ)
- 「今、俺はハイパーになっている!」(同194ページ)
- 「最悪できなくても大丈夫!」(同199ページ)
など熱い言葉からクスリと笑ってしまうものまで集められており、そこには「ああ、島本に比べればまだマシかも」(同139ページ)と読者に締切を乗り越えてもらいたい、との思いがあります。
そして「この世に命を断つほどに価値の高い仕事も(中略)漫画も、ないんです」(同140ページ)との言葉は、著者が漫画家という修羅場をくぐり抜けてきたからこそ出るものでしょう。
「締切と闘え!」島本和彦 著 ちくまプリマー新書 990円(税込)