RPGに登場するドラゴンやケンタウロスなどは、生物学的に見ればありえない構造だからこそファンタジーに登場するべき生物といえます。しかし、本当にそれらは存在し得ないのでしょうか?「ドラゴンは爬虫類」(以下、本書)はその可能性を考える一冊です。

川崎さんちのリアルドラゴン
本書は「骨格と進化から読みとく伝説動物の図鑑」の副題のとおり、生物学の観点からいかなる進化を重ねれば幻想的な動物が実現可能かを考察したものです。もちろん著者の考えによるフィクションではありますが、骨格的に考察されるその姿はある種のリアリティを持って造形されたものになります。
例えば、いわゆるドラゴンの出で立ちは背中に翼が生えているものですが、本書の解釈では「肋骨の伸長で翼のような帆を作る2足歩行の恐竜」(本書17ページ)となり、これは実際のトビトカゲを参考にして生まれた造形であります。
ユニコーンだけじゃない、可能性の獣たち
そんなわけで、著者にかかれば伝説の生物もある種の「へんな生き物」になってしまいます。それは哺乳類と見られる生物に顕著で、ユニコーンは角の生えた馬ではなく「ウマのような姿に収斂進化したサイの仲間」(本書57ページ)になり、聖なる獣というよりは妙にスマートなサイになります。
さらにUMAの代表格・ツチノコについては、ヘビではなく足が退化し体毛を鱗に変えたげっ歯類として解釈しており、ファンタジーにおいても謎の生物であるサンドワームに至っては「長い鼻が肥大化したゾウの仲間」(同93ページ)との意外な解釈が披露されます。
ドワーフはネアンデルタール人だったんじゃないか説
ファンタジーに欠かせないのがエルフや獣人など、人間に近しいいわゆる「亜人種」。本書でもそれに関しての記述があり、エルフは「獣のとがった耳をそのまま残した種族」(本書104ページ)との解釈が採用されています。さらにエルフと並ぶ亜人種・ドワーフではさらなる意外な解釈が。
それは「ネアンデルタール人というドワーフ」(同107ページ)というもの。現在の研究では現生人類とともにネアンデルタール人が生きていた時代があり、その記憶がドワーフを生み出した、と考えるとロマンチックであると同時に不思議と納得できる気もします。
夢を叶えて進化論
とはいえ、ここまでの解釈は四足歩行動物という前提で行われてきたもので、ケンタウロスなど6脚もある生物は実在させるためには難易度が高いと言わざるを得ません。「そこでこの6本の足がある脊椎動物を考えるために、魚から4足動物に進化するところまでさかのぼります」(本書126ページ)との大転換を必要とするのです。
それを活用すれば予言獣の一つ、アマビエですらリアリティを持って考察できるわけです。現実世界には「まだまだ名前もつけられていない未知の動物もたくさんいて」(本書158ページ)、本書の動物ももしかしたら実在したりするのかもしれません…。(Re)
「ドラゴンは爬虫類」川崎悟司 著 大和書房 1650円(税込)