毎月新聞

 「ピタゴラスイッチ」や「Eテレ0655」など、佐藤雅彦が関わる番組が日常に流れてから早幾年。今も変わらぬ面白さの中に見逃しがちな視点を盛り込んだそれらに、通底する感覚をうかがえるのが「毎月新聞」(以下、本書)です。

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毎月新聞 (中公文庫) [ 佐藤雅彦 ]
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「ピタゴラスイッチ」につながる、よしなしごと

 本書は「ピタゴラスイッチ」などを手掛けた佐藤雅彦が新聞連載したコラムを単行本化したものです。「新聞の中の新聞」というコンセプトで構成され、1998年から2002年まで連載が続きました。コマ漫画や当時の事件も掲載されており、30年近い過去の状況がみえます。

 2002年の記述には「制作に参加したNHKの幼児教育番組が(中略)始まります」(本書259ページ)とあり、「ピタゴラスイッチ」の開始を告知しています。本書の挿絵や内容には、同番組につながるクスリとさせる仕掛けや普段考えない視点が見られ、そのルーツを垣間見られるでしょう。

「だんご3兄弟」にはヒットしてほしくなかった?

 「ブーム断固反対」(本書39ページ)と銘打って、著者が関わったヒット曲「だんご3兄弟」についてその所感を述べています。同曲について「中身を置いてきぼりにしてしまう記号的な消費」(同42ページ)のブームが起き、制作の意図から離れすぐに忘れられてしまう可能性に危惧を覚えていたようです。

 「この騒ぎに関係なく、いつまでも楽しく歌い継がれていけたら」(同)との期待通り、現在でも歌われている「だんご3兄弟」。結果的に著者の杞憂となったわけですが、そこにはブームに流されない、著者が提起する視点に基づいたテーマが曲に内包されていることが大きいのでしょう。

なんだ、この気持ちって

 「日常のクラクラ構造」(本書45ページ)では、ゴミ袋の包装を再びゴミとして捨てる行為に注目していますが、これは「Eテレ0655」で放送されている歌「へんな気持ち」で歌われている内容であります。このように本書で綴られている内容は、のちの仕事に繋がっていることがわかります。

 本書の連載漫画「ケロパキ」に登場するカエルのキャラクターも、同番組の1コーナー「日めくりアニメ」でレギュラーともいえる登場ぶりです。そんなわけで、本書巻末に収められたボツ作品とともに懐かしいというよりは連綿と続くシリーズのように感じてしまいます。

日常の違和感からのひらめき

 先に述べたように、本書の主題は著者が問い続けている日常に潜む違和感、そこから導き出された発想の転換であります。エッセイとして軽妙な語り口の中にチクリと刺さる、まさにクラクラするほどの衝撃がそこにあり、それは現在でも色褪せることはありません。

 「基本は大人になってから」(本書207ページ)との指摘は、これまで学んだことの意味を理解するには時間が必要なことを指します。かつて連載当時目にした人が、現在になって本書の面白さ、奥深さに気づくことがあるかもしれません。

「毎月新聞」佐藤雅彦 著 中公文庫 924円(税込)

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