本当にためになるゲームの歴史

 遡ることファミコンブームの時代、有象無象のメーカーが乱立し多くのゲームを開発していたのはそこに商機があったから。「本当にためになるゲームの歴史」(以下、本書)はゲームのビジネスモデルに着目してその歴史を語った一冊です。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

本当にためになる ゲームの歴史 [ 岩崎啓眞 ]
価格:1,760円(税込、送料無料) (2025/7/28時点)


(本記事では「テレビゲーム」を本書に習い「ビデオゲーム」と表記すること、ご了承のほどを)

「コインいっこいれる」から始めよう

 本書は、PCエンジンで傑作を生み出したプログラマーだった著者がビデオゲームの歴史を紐解くものです。ただその内容よりもゲームで利益を上げるビジネスモデルを中心に、その変化が内容にも影響を与えるさまが綴られていきます。

 ビデオゲームでいかにして利益を上げるか。その最初のモデルがアーケードゲーム(以下、AC)「PONG」で導入された、コインを投入して遊ばせる「都度課金」(本書014ページ)。しかし、この方式で儲けを出すにはできる限りプレイ時間を縮めることが求められ、それはゲームの難易度上昇に繋がりました。

アーケードゲームと家庭用ゲーム、収益モデルの違い

 しかし家庭用ゲーム機のようなゲームハードごと購入する買い切り式モデルが現れると、ゲームソフトそのものをAC1プレイ以上の値段で入手することになります。そこではプレイ時間の長さがセールスポイントになり、その条件にふさわしいゆえにRPGは家庭用ゲームのメインジャンルになっていきました。

 また、ACの「ストリートファイターII」では他のプレイヤーが乱入できる対戦方式を導入、「負けた側はゲームオーバーになるが、勝った側はゲームを継続できる」(本書072ページ)システムがこれまでのACビジネスモデルに一石を投じ、その意味でも傑作であったのです。

「基本プレイ無料」のカラクリ

 新世紀を迎えオンラインゲームが台頭してくると、基本ソフトを購入する方式から通信料金に伴う定期的な課金、そしてゲーム本体は無料と、ネットワーク環境の変化に応じてそのビジネスモデルは刻々と変化していきます。それは主に国策でネットワークの普及を推進した韓国において進んでいきました。

 その中でゲーム本体が無料のモデルすなわち「F2P」は、ゲーム内でのアイテムや通貨、アバターなどを有料化し(その中には「ガチャ」も含む)、その売上で収益を得るモデルであります。さらに「ハイパーカジュアル」と名付けられた極めてシンプルなゲームを広告収入で利益を出すモデルも普及してきました。

ビジネスモデルの変化がゲームを進化させた

 このように、ビデオゲームの進化は収益モデルと不可分の関係にあります。そしてそれらは並行して存在し、ゲーム産業のジャンル多様化と成長の一因になったといえるでしょう。ただ歴史的に見れば各収益モデルのアイデアは突発的に生まれたものではなく、技術的な問題をクリアしたうえで表面化した部分も本書で解説されています。

 ただ本書で著者が指摘しているように、ゲームに関する記録(特に韓国)に不明瞭な部分が多く、いかにゲーム産業が自らの仕事を振り返らないのかがわかります。裏を返せばそれほどの勢いがあったビジネスであり、これからもビデオゲームの歴史が探求されることに期待したいものです。

「本当にためになるゲームの歴史」岩崎啓眞 著 ぱる出版 1760円(税込)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です