その昔、パチモン商品を掴まされたことはないでしょうか。現在でも漫画の海賊版サイトなどが問題となっています。それを防ぐために必要なのが知的財産権の保護であります。「世界は知財でできている」(以下、本書)は知的財産にまつわる事例を解説したものです。

知的財産とその権利
本書は「人間の知的活動によって生み出された財産的な価値を持つ情報」(本書12ページ)である知的財産(以下、知財)を巡る状況を網羅したものです。著作権や特許権、肖像権など、知的財産権の保護がなされることで、新たに有益な情報を生み出した人間に正当な利益が渡るような仕組みが構築されています。
しかし、それは知財を守ろうとする者と規制をすり抜けて利益を得ようとする者との争いが繰り広げられている世界でもあります。本書はこれまでに起きた知財に関する問題を列挙することで、知財保護の仕組みとその現在地を解説し、知財に関する知識を深めるものとなっています。
生成AIが生み出したものに権利はあるのか
本書においてまっ先に扱っているのは、近年普及し始めた生成AIについて。文章や画像、動画までも制作してくれる生成AIは、人間の知的活動とみなされるのかどうか「現時点ではどういった対応がベストなのか判断の難しいところがある」(本書39ページ)ようです。
さらに、ネット上で生まれたキャラクターの商品化に待ったがかけられた問題や、アバターを使って配信するVチューバーの権利についてなど、印刷物や物質的な商品とは違うネットを中心とした知財に関する複雑な事情も語られています。それゆえ、意外なところで足をすくわれる事態も起こり得るのが今の知財に関する状況といえるでしょう。
知財を合わせて権利を守れ!
知財を守るためには「特許権、意匠権、商標権などで複合的な保護」(本書154ページ)が必要とされます。それは安易なコピー商品の流通を防ぎ、制作者が損をしないためでありますが、知財保護の隙をつくように権利を主張する者が現れるのは世の常であり、防衛策の複雑化は避けられません。
例えば日本独自のブドウ品種である「シャインマスカット」が海外へ流出してもその品種保護は国内でのみ。国際的な種苗管理は存在していないため、同じように複合的な保護を駆使してその権利を守らざるを得ない難しい事情が紹介されています。
それでも知財を守るために戦い続ける
先のAIやネット上の存在など、国をまたいだコンテンツに対していまだに知財の権利は曖昧な点があります。そしてグローバル化した世界で問題はさらなる複雑化を進め、一般的な目線では俯瞰するのも難しい状況になっています。こうなると知財を守る行為はさじを投げたくなる難事に思えてくるでしょう。
それでも「汗を流して一生懸命作り上げた成果物にフリーライド(ただ乗り)する行為については、不正行為を構成する」(本書291ページ)として断固とした態度をとらねばなりません。そのためにも知財に関する取り決めをより良い形に整えなければならないのです。
「世界は知財でできている」稲穂健一 著 講談社現代新書 1210円(税込)