12月4日はチーターの日だそうで、ネコ科動物にも多くの種類が存在します。我々はその種類をどれだけ知っているのでしょうか。「世界の飼い猫と野生猫」(以下、本書)は世界にあまねく存在するネコ科動物と身近な猫の写真を集めた一冊です。
ネコ科動物からイエネコまで
本書は、身近には見られないネコ科動物から身近なイエネコたちの写真を集めたものです。イエネコも、もとを辿れば野生のリビアヤマネコを祖先とするわけで、可愛らしいとされるイエネコも「内に野生の本能を秘めている、このモフモフの存在」(本書4ページ)として生きているのです。
本書冒頭にはそれら野生ネコたちを集め、おなじみのチーターやライオンだけではなく、ユキヒョウやスナネコなど世界の各地に住むネコ科動物の写真を満載しています。各種類には解説文が添えられ、大型にせよ小型にせよ基本的な造形はほぼ同じネコなのがわかります。
walk like Egyptian mau
本書のメインはやはりイエネコ。長毛種と短毛種に分けて紹介されており、ベンガルヤマネコと交配させて品種改良したベンガルやアメリカン・カールのような突然変異で生まれたイエネコが所狭しと紙面を飾ります。本書の半分近くを占めるほどにイエネコの種類は多いのです。
その中にはアメリカンショートヘア、エジプシャンマウ、ロシアンブルーなど、出身地を名前にした種類も多く、果ては中国生まれの「ドラゴン・リー」なる種類もあるそうで、世界中をすみかにしたイエネコたちの繁栄ぶりがうかがえます。しかし「その95パーセントが『モギー(雑種)』」(本書41ページ)なわけで、それを含めればイエネコの種類は無限大といえるでしょう。
猫の能力、知ってるつもり?
本書中盤にはイエネコの特徴についての章が設けられています。暗闇で光に反射する目の写真を添えて「暗闇でのネコの視覚は人間の6~8倍も優れている」(本書148ページ)など、ヒゲや耳、肉球までも、その造形や習性が持つ役割を解説しています。
そしてネコは生まれながらのハンターであり、獲物を狩るための身体能力を持っています。高い場所を好み、そこに到達できるだけのジャンプ力、平衡感覚を持っている彼らは、飼われていてもそれを失うことはありません。本書に収められている写真はそのことを十二分に教えてくれるのです。
考えるな、可愛さを感じろ
しかし、ネコが飼われてきたのはやはりその可愛さがあってのこと。本書の最後には子猫の写真が集められており、各々の種類が見られます。毛のないドンスコイですら、子猫だと可愛く思えてくるのは小さいからこその特権なのかもしれません。
「早くから一緒に育てるなど、社会性を身につけると、他のペットや動物とも仲良くなれる」(本書173ページ)とのキャプションとともにイヌとネコのツーショットがあったりと、ペットの代表格としてイヌとは違った望ましい進化を遂げたネコ。改めて本書でその魅力を確認してはいかがでしょうか。
「世界の飼い猫と野生猫」ジュリアナ・フォトプロス 著 沢田陽子 訳 今泉忠明 監修 エクスナレッジ 3080円(税込)