自動車やバイクのプラモに同サイズのフィギュアを添えると作品が引き立ちますが、フィギュアそのものが主役たりうるものも数多くあります。「知っておきたい女性フィギュアのはじめかた2」(以下、本書)は小スケール女性フィギュアの作り方を指南したものです。
いかにして戦車模型誌が女性フィギュアを扱うに至ったか
本書はミリタリー模型専門誌「月刊アーマーモデリング」の記事を単行本化したもので、女性フィギュアの制作に特化した第二弾です。日本ではアニメや漫画の女性キャラクターを立体化したフィギュアは40年ほど前からありましたが、本書で扱うものはリアルに造形された1/20〜1/35スケールのフィギュアになります。
なぜ戦車などを扱う模型誌が女性フィギュアに注力したのか。前作でそのくだりが語られていますが、それはかつてミリタリーモデルにおける女性フィギュアの少なさを起点とします。それが10年ほど前にアニメ「ガールズ&パンツァー」の盛り上がりと並行して小スケールの女性フィギュアが多く発売されるようになり、同誌がそれに合わせ塗装法を特集すると、売り切れるほどの人気記事となりました。前作と本書はそれを受けての単行本化となります。
時は流れる、フィギュアは増える
そんな前作から5年ほど経ち、リアル女性フィギュアは複数メーカーより発売され、模型のカテゴリーとして無視できないほどの規模となりました。本書ではそれに合わせ商品的にも技法的にも「『手に入れやすい』を重視した記事」(本書002ページ)を掲載しています。
その中にはタミヤやマックスファクトリーなどによる実際の人物を3Dスキャンしたフィギュアがあります。手軽に入手できる反面、本物がある以上塗装には今までと違うアプローチが必要になります。本書では作業工程を段階ごとの分解写真で掲載、様々な手法で挑戦しているのがわかるでしょう。
「ガッカリ姉ちゃん」を美人に!
先に述べた通り、1/35を標準スケールとする戦車などのAFV模型には、それらを飾る男性兵士のフィギュアはあっても女性フィギュアはほとんど存在しない時代が長らくありました。そんな中でパッケージとキット造形との落差から「ガッカリ姉ちゃん」と呼ばれた女性兵士フィギュアがあったのです。
本書ではそれを使って改造せず塗装だけで顔を美人に仕上げる方法を紹介しています。女性フィギュアにおいてはメイクをするように「塗る」のではなく「描く」ように塗装し、小スケールゆえの「モールドが何も無いところに描いてしまったほうがそれっぽく見える」(本書081ページ)塗装で造形する方法がわかります。
手のひらサイズに命を吹き込め
小型でも、模型の添え物から独立して成立しうる女性フィギュアが商品化されてしばらく経ちますが、かつてのガレージキットのごとく往年のアニメヒロインを立体したものや、同じものが複数のスケールで展開されるなど、フィギュアそのものを楽しむ文化が広がりつつあります。
もはや手の届かないキットではなく、ガレージキットに比べればはるかに扱いやすくなって手元に置ける女性フィギュア。それを仕上げるのはモデラーの腕にかかっています。本書でそのとっかかりを見つけてみてはいかがでしょうか。
「知っておきたい女性フィギュアのはじめかた2」アーマーモデリング編集部 編 大日本絵画 3300円(税込)