その昔テレビ番組でリカちゃん人形が特集されたとき、ボーイフレンド人形の顔つきに既視感を覚え、よくよく考えてみれば同メーカーの「変身サイボーグ」によく似ていたことに気づき、妙に得心した記憶があります。「増補版 お人形事典〜ファッションドール編〜」(以下、本書)はこれまでに発売された着せ替え人形を集めた一冊です。
着せ替え人形と一口に言っても…
本書は、商品化された着せ替え人形をカタログ形式で一覧したものです。一口に着せ替え人形といっても、人間の1/6〜1/8サイズの標準的なものからそれより大きい、もしくは小さいサイズなど多岐にわたり、共通しているのは布製の衣装を着せ替えできる機能を持つことでしょう。
本書はアルファベット順に掲載され、人形一種類ごとにページの表裏が振り分けられ、前面と背面の写真を掲載しています。本として読むには不便な作りですが、ほぼ実寸で載っている(例外あり)人形たちのサイズ感が感じられる作りは(特にヴィンテージもの)人形本来の姿を知るには正しいのかもしれません。
How many 濃い顔
さて、ファッションドールの中でも重要な位置を占めるのは、近年映画化もされた「バービー」でしょう。バービー以前の着せ替え人形といえば、ビスクドールなどに代表される女の子をかたどったものが主流で、大人のファッションを着こなせるプロポーションのバービーは画期的な人形だったのです。
本書ではバービーの歴代モデルのほか、以降に発売された海外製の着せ替え人形を数多く紹介されています。リアリタッチで濃いめの顔つきなどが国民性を象徴しているようで、その幅は広いのです。そんな中、心持ち幼い顔つきの「タミー」が日本で人気になったのは想像に難くありません。
「もしもし私ジェニー、昔の名前は忘れたわ…」
「とは言え、タミーもやはり舶来品なので、日本の子どもたちの現実とは乖離した存在」(本書228ページ)だったがゆえ、日本独自の着せ替え人形が登場します。それが現在まで続く「リカちゃん」で、本書ではバービーと同様に歴代モデルとバリエーションを掲載、その歴史を感じさせます。
リカちゃんのヒットにより日本製着せ替え人形は数多く作られていきますが、その中でも数奇な歴史を辿ったのが「ジェニー」。本来日本版バービーとしてローカライズ販売されたものの、ライセンス契約終了により改名、他社より別の人形がバービーとして発売されるなどの経緯が各人形の解説からうかがえます。
着せ替え人形は大人のものか、子どものものか?
数奇な歴史といえば、大型の頭部を持つ「ブライス」もその誕生は半世紀以上昔であり、新世紀になって日本で復刻されるやいなや大人気になりファッションドールの新たなスタンダードになった経緯は、着せ替え人形が多様性を獲得し、大人のコレクションに含まれる存在になった時代性も感じます。
本書の旧版出版は2004年であり、この時期はユーザーが人形の衣装や髪型を創作するドールカスタマイズが一般的になった時期と一致します。その一方「本来のターゲットである子どもの興味は徐々に(中略)離れ始め」(本書259ページ)た時代でもあります。
100円ショップでドールカスタマイズの素材が入手できる現在、着せ替え人形は身近になったのか、否か?本書でその歴史を眺めてみるのも良いのではないでしょうか。(Re)
「増補版 お人形事典〜ファッションドール編〜」たいらめぐみ 著 グラフィック社 2860円(税込)