80年代後半のファミコンブームは様々なゲームを生み出しました。しかし、その中には発売されなかったものも多くあったのです。「ファミコン発売中止ゲーム図鑑」(以下、本書)はそんなゲームたちを当時の雑誌記事から集めたものです。
ファミコン発売中止ゲーム図鑑税込1,870円(2024/06/30時点)未だ見ぬファミコンゲームを探して
本書は「大人の事情や商業主義の摩擦により発売中止、もしくは仕様変更に至ったソフト」(本書004ページ)を集めたものです。そのほとんどは当時発売されたゲーム雑誌や児童誌からの抜粋であり、ファミコンブームに乗って出版された雑誌の多さも感じ取れるでしょう。
ファミコンが発売された1983年、最初期のラインナップに予定されていながら「ドンキーコングの音楽遊び」が発売中止となっており、以降カセット版「バレーボール」やディスクシステムでの大作「聖剣伝説」(発売されたゲームとは別)など、未発売に終わるゲームが増えていきます。
移植作、洋ゲー、企画倒れ
ブームとなったとはいえファミコンの性能は決して高いわけではなく、先の「聖剣伝説」のようにゲームシステムがハードに追いつかず企画倒れになるゲームも多かったようで、そんな中ファミコンで(発売中止になったとはいえ)「冒険浪漫」のようなパソコンゲーム移植作が出てくるのもむべなるかな。
また「レジェンド・オブ・ヒーロー・トンマ」のように、アーケードゲームの移植でファミコン版よりPCエンジン版が優先されたのはハードの性能差が推測されます。同様に「ロケットレンジャー」や「アベンジャーズ」など洋ゲーやアメコミ原作ゲームの発売中止も日本人には今ひとつ訴求力が足りなかったがゆえの結果なのでしょう。
日本発なのに、発売されないの?
さて、逆に海外で発売されながら日本では発売されなかったゲームもあります。その一つ「ストライダー飛竜」はアーケード版やメガドライブ版と違い、メトロイドヴァニア系探索ゲームだったようです。日本を代表する怪獣映画のゲーム「ゴジラ2」も同様であり、日本で発売しなかった理由がいささか理解しづらいところ。
日本を代表する、といえばロボットアニメ。歴史的な作品「装甲騎兵ボトムズ」がファミコンゲームとして企画されていたのは驚きでありますが、「機動戦士ガンダム」も「SDガンダム」としてゲーム化されていた状況で、あの世界観をどのように再現するかは不安要素が大きいと言わざるを得ません。同様にロボットアニメの影響を受けたアドベンチャーゲーム「メタルクラッシャーアーディス」も名作「メタルスレイダーグローリー」とかぶる要素が満載で、発売されていたらどうなっていたか興味深いところです。
色々あって、発売されました
本書の後半は発売されたゲームからその変遷を追ったものになっています。タイトルに偽りありと言いたくもなりますが、「ドラゴンクエスト」シリーズや「スーパーマリオブラザーズ3」などメジャータイトルの開発過程が見られ、「トランスフォーマー コンボイの謎」では主人公ウルトラマグナスが「ダイアクロン」として発売された当時の「パワードコンボイ」カラーになっているのが興味を引きます。
他にも海外版では「キャッスリアン」として発売されたゲームも「キョロちゃんランド」とキャラを変えて発売されたり、タイトルが二転三転したゲームもあり、商品化には並々ならぬ苦労がうかがえます。少なくとも本書でファミコンゲームの栄枯盛衰が見られるのは、当時のファミコンを巡る状況が活発だった証左にほかなりません。(Re.)
「ファミコン発売中止ゲーム図鑑」鯨武長之助 著 三才ブックス 1980円(税込)