ファミコンが誕生してからはや40年が過ぎました。今となってはスマホにも劣る性能のゲーム機が、日本ならず海外にも多大な影響を与えたのはもはや歴史の1ページとなっております。「増補新版ファミリーコンピュータパーフェクトカタログ」(以下、本書)はファミコンの情報を網羅した一冊です。
(本記事では海外版のソフト名をカタカナ表記する旨、ご了承の程を)
この厚さが、歴史の重み
本書は1983年に発売された家庭用ゲーム機・ファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)のハードとソフトを網羅したものです。今回増補新板となるにあたり「旧版のおよそ1.5倍におよぶ352ページ」(本書002ページ)となり、厚みを増す結果となりました。
80年代前半に始まった家庭用ゲーム機の販売競争の中で圧倒的なシェアを誇ったのがファミコンであり、その知名度は一時期家庭用ゲーム機といえば「ファミコン」と呼ばれたことに現れています。本書ではその社会的影響にも触れられ、「日本における家庭用ゲームが一過性の『おもちゃ』ではなく『産業』となった」(同010ページ)きっかけのゲームハードであることが語られています。
夢が送れる、試行錯誤のシステム
本書前半ではファミコンのハードについて解説、拡張機器や家電メーカー・シャープによるファミコン内蔵テレビまで紹介されています。拡張機器の一つ、キーボードとセットになった「ファミリーベーシック」は「コンピュータ」の名に恥じないものか、と思いきや「ファミコン自体が本来パソコンとしての使用を想定した設計ではなかった」(本書030ページ)ゆえ初心者向けの仕様だったようです。
ファミコン拡張機器の中でも有名なのはやはりフロッピーディスクと似たクイックディスクを採用した「ディスクシステム」。当初大容量とセーブ機能を売りにしたハードでありましたが、ディスク以上の大容量ROMカートリッジの普及によりその役目を終えることになります。しかし「ゼルダの伝説」「メトロイド」「悪魔城ドラキュラ」などディスク由来の傑作を生み出した功績は、ファミコンにおける試行錯誤の中でも特筆すべきでしょう。
君は知るか、「ドラゴンウォーリアー」!
増補新板となった本書で追加されたのはアメリカで「NES」として発売された海外版ファミコンソフトの記述であります。海外版ソフトのタイトルには日本版タイトルを併記しており、
- 「悪魔城ドラキュラ」→「キャッスルヴァニア」
- 「ロックマン」→「メガマン」
- 「超惑星戦記メタファイト」→「ブラスターマスター」
と、かなり名称が違うのがわかります。
その中でも「ドラゴンクエスト」が「ドラゴンウォーリアー」として発売されていたのはあまり知られていないようです。「ウルティマ」や「ウィザードリィ」がNESに移植されている中、日本でのようなヒット作とならなかったのは当然ともいえますが、「ファイナルファンタジー」(名称変更なし)とともに日本の2大RPGが海外に進出していたのは以降の世界的ヒットに繋がる伏線だった、と考えるのは早計でしょうか。
ファミコンやろうぜ、と集まったあの頃
ファミコンがヒットした理由は従来のゲーム機に比べて後発だったのもありますが、
- アーケードゲームが移植できる高性能のハードとして設計されていたこと
- サードパーティ制を導入し多数のゲームを遊べるようにしたこと
- 「スーパーマリオブラザーズ」のようなキラータイトルを揃えられたこと
などの理由が考えられます。しかし一つ一つを取れば他のゲーム機も行っていたことであり、それらが揃った絶妙なバランスの戦略が功を奏したのかもしれません。もしそれに不備があったなら、同時期に発売されたセガ製ゲーム機にシェアを奪われていた可能性があったわけです。
ともあれ、一時代を築いたことには違いないファミコン。半世紀に迫る過去の雰囲気を本書で思い出してみるのも良いのではないでしょうか。
「増補新版ファミリーコンピュータパーフェクトカタログ」前田尋之 監修 ジーウォーク 3960円(税込)