往年のアニメ「魔神英雄伝ワタル」が新たな装いで復活するなど、デフォルメロボの需要はまだまだあるようです。「デフォルメロボの描き方」(以下、本書)は等身の低いロボット・いわゆるデフォルメロボの描き方を解説した一冊です。
キミの描きたいロボはどれだ?
本書は、もはやロボットデザインの一流派であるデフォルメロボの描き方、そのノウハウを掲載したものです。実際のロボットにおいても、人間と触れ合うものでは親しまれるデザインが重要であり、その源流には「SDガンダム」など、ロボットアニメに登場する巨大ロボットの頭身を低くしたデフォルメロボがあります。
本書ではデフォルメロボを3種類に分けており、
- スタンダードタイプ(2.5〜3等身)
- ハイレゾタイプ(3.5〜4等身)
- マスコットタイプ(2頭身)
に分けて解説しています。いわゆるデフォルメロボの標準的なスタンダード、設定上等身の低いリアルロボット・ハイレゾ、いわゆる「SD」と呼ばれるマスコットと、用途に応じたデフォルメが求められます。
リアルとデフォルメではどう違うか
いわゆるリアル頭身のロボットでは巨大感を出すパースを意識した描き方が重要ですが、デフォルメロボではその方法論が通用しません。本書では同じデザインでリアルとデフォルメの相互変換を例に、その違いを示していきます。そこではどういう意図でデザインし直していくかが重要で、かっこよくするのか、可愛くするのかを意識しつつどこを強調するかが問われます。
同様に、先の3タイプの描き方を同じデザインで描きあげていきます。商品化もできるように関節や可動範囲も意識して描くハイレゾタイプと、シルエットや特徴を強調していくマスコットタイプでは描くポイントが随分違ってくるのがわかるでしょう。
デフォルメでもナイスポーズで〜す!
イラストなどで発表する以上、デフォルメロボでもポージングは欠かせません。手足が短いのにポーズが取れるのか?とのご心配は無用。本書では箱組が基本の単純な「箱ロボ」を用いてポーズを検討する方法を解説しています。マスコットタイプでなおのこと「絵の“嘘”とは言ったもんだが」(本書136ページ)末端の位置を変えるだけでもポーズをつけられるのが便利なところ。
人型である以上、ロボットも人間の構造を意識しないとうまく描けなかったりしますが、デフォルメロボならばそのハードルを下げて取り掛かることができるわけで、逆説的にデフォルメロボを描くことで人体を描く練習になる部分は大きいと思われます。
デフォルメロボはハードルが低い
本書が生まれるきっかけは著者が「『倉持さん、デフォルメ下手ですよね』と言われた」(本書12ページ)事に始まります。漠然とデフォルメするのではなく、仕事上クライアントの意向に沿ってデザインする中でその方向性を模索することが重要であるとの気付きから、タイプ別のデフォルメロボが生まれてきたのです。
いわゆる「メカ」を描くのが苦手でも、ロボット、さらにデフォルメとなれば描くハードルは低くなります。本書ではデフォルメの肝や逆にディテールの入れ方、用途別のデザイン発想法なども盛り込まれ、「ロボットを描いてみたい人の入門にもちょうどいい」(本書159ページ)一冊でしょう。(Re)
「デフォルメロボの描き方」倉持キョーリュー 著 ホビージャパン 2200円(税込)