ねこのめ美じゅつかん

 芸術家・岡本太郎は、芸術を大衆のものにすることに努めた人物でした。「アート」と言葉が変わっても、人々は芸術を身近に感じているのでしょうか。「ねこのめ美じゅつかん」(以下、本書)は気軽にアートを楽しむためのテレビ番組を単行本化したものです。


アートってのは、自由に楽しんでいいんだぞ!

  本書は、NHKEテレで放送されている「ねこのめ美じゅつかん」の単行本です。(お笑いコンビ・カミナリが声を当てる)怪盗ネコたちが美術館に忍び込み美術作品を鑑賞する内容で、作品とその制作者に関する知識を解説する「世界一やさしいアート入門」の副題に違わぬ番組です。

 本書では、替え歌で送る「画家のうた」や作品中に描かれた猫を探す「ねこどこココ」など番組中のミニコーナーや、番組中で作中の人物が言っているであろうセリフを想像した「耳をすませば」など番組の要素を盛り込み、自由なアートの楽しみ方を提唱しています。

ダリちゃん、モディちゃん、ローランちゃん?

 本書前半は西洋美術編としてボッティチェリからキース・ヘリングまでの芸術家を紹介しています。年代順に紹介しているからか、ルネサンスの芸術家として一括りにされやすいダ・ヴィンチとミケランジェロの間にメッシーナのページが挟まれ、先の二人の年齢差を強調したり、隣り合っているゴーギャンとゴッホの共同生活について触れられていたりしています。

 番組中で芸術家をちゃん付けすることもあって、マリー・ローランサンを「ローランちゃんの絵って、(中略)不思議な感じ」(本書114ページ)との記述も見られます。また「なんで顔が長いんだ?顔長いほうがモテたのか?」(同118ページ)とのモディリアーニの絵に対するツッコミなど、怪盗ネコの素直な感想が美術へのハードルを下げてくれます。

日本の芸術家って、動物描いてんの多くねぇか?

 本書後半は日本美術を運慶(一派)から草間彌生まで紹介、基本的に有名な芸術家を挙げている中、(ミニコーナーの中で)成田亨と同じく「ウルトラマン」で造形を担当した芸術家・高山良策を紹介しているのは親しみやすくするための変化球でしょうか。

 先の高山良策だけではなく猫の彫刻を作った朝倉文夫、動物を擬人化した歌川国芳、猫のように可愛らしい虎を描いた長沢芦雪など、本書の日本人芸術家は動物をモチーフにした作品が目立ちます。また、コラムの中で恐竜の復元画についての記述があり、「恐竜の絵って、アートなのか?」(本書126ページ)とのちょっとした疑問が興味を引きます。

アートは、知識があるともっと面白くなるんだかんな!

 番組中では古代の名もなき人が制作した美術品にも言及していますが、本書では名のある芸術家を扱っており、それはその人となりや生い立ちを解説するためでもあるのでしょう。作品の成立には作家の周辺や生きた時代が大きく関わっており、それを知ることが作品の理解につながるのは言うまでもありません。

 外出もままならない時期に始まった番組ではありますが、芸術を楽しむということはそれを制作した人物との対話であり、言葉のないコミュニケーションとも考えられます。今だからこそ巻末の国内美術館案内をもとに足を運んで鑑賞するのも良いのではないでしょうか。

「ねこのめ美じゅつかん」NHK「ねこのめ美じゅつかん」制作班 著 宝島社 1760円(税込)

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