子供の頃は何も考えず筆を使ってプラモを塗っていたものですが、エアブラシを手に入れると、筆を手に取るのには抵抗を覚えてしまいます。「凄腕モデラーのプラモ筆塗りスタイル」(以下、本書)は筆塗りだけでプラモを仕上げる作例を集めた一冊です。

筆塗りのノウハウ本ではありません
本書は模型雑誌「月刊ホビージャパン」の連載記事の単行本です。多数のモデラーがいかに筆塗り塗装でプラモを仕上げるのかを集め、「まさに十人十色とも言える、筆塗りスタイルがここにあります」(本書044ページ)と、いわゆる「筆塗りの教科書」ではないものといえるでしょう。
序盤には各種模型用塗料の紹介がてら同じガンプラを塗装した作例を紹介、また見本としてガンダムとザクのキットを使い、筆塗りを生かした汚し塗装を施した作例を詳細に塗装工程を解説しています。しかしこれが筆塗り塗装の定番というわけではなく、やり方はモデラーの数だけあるのです。
筆ムラを恐れるな
とはいえ塗装では、塗りやすいように塗料を薄め液を使って調整するもの。それゆえ(筆塗りに適した濃度の塗料があるにしても)一度塗るだけでは模型の下地を覆い隠せず、何度も塗装を繰り返すことになります(エアブラシでも同じではありますが)。ただ筆塗りではどうしても塗りムラが発生するわけで…。
本書の作例ではそれを活かす形で重ね塗りを行っており、色を重ねるうちに塗りムラは効果を発揮し、味となります。現物があるスケールモデルでは汚し塗装に最適な方法といえるでしょう(もちろんキャラクターモデルにもリアリティを出すためにも使われます)。
「マシーネンクリーガー」は失敗から生まれた?
そんな筆塗りを用いるモデラーの代表格、横山宏のインタビューが本書冒頭に掲載されています。「マシーネンクリーガー」(以下、「Ma. K.」」)に代表される作品は独自の塗装で他のモデラーを刺激し続けてきました。そんな横山も「そもそもわし、(模型を)組むのがめちゃくちゃ下手なんですよ」(本書009ページ)と、自分の弱点を惜しげもなく語ります。
「組み立ての失敗を隠すために、筆塗りしちゃってるからなんの不安もない」「だから筆ムラなんて気にしないで、ガンガン楽しく塗っちゃいましょうね」(同010ページ)との言葉は筆塗りの不安を払拭してくれます。また、エアブラシで「MAX塗り」を確立したモデラー・MAX渡辺との対談では「わしも筆とエアブラシ両方使うもん。それぞれにいいところがあるからね」(同077ページ)と、適材適所で塗装方法を変える柔軟さを語り、導入するハードルの低さが筆塗りの利点なのです。
筆塗りは一回にしてならず
同様に、本書では各モデラーに筆塗り導入のきっかけを聞いており、経緯に差はあれど幼少期プラモに触れながら、大人になって出戻ってきた人が多いようです。筆塗りを選択したのは複数回答が見られるようにやはり「Ma.K.」の影響が大きいのでしょう。
水性塗料や汚し専用の塗料など、昔に比べれば筆塗りの塗装環境は改善され、先の言葉通りハードルは年々低くなっています。本書のモデラーのように再び筆塗りを選択してみるのも良いのではないでしょうか。
「凄腕モデラーのプラモ筆塗りスタイル」ホビージャパン 2640円(税込)