古代文字を解読していたら、研究に取り憑かれた話

 ファンタジー作品などでは、一部の人しか読めない古代文字が何らかのキーワードだったりします。現実の世界にも解読されていない文字は数多くあるのです。「古代文字を解読していたら、研究に取り憑かれた話」(以下、本書)は古代文字の研究者たちが書いた一冊です。


古代文字研究者、三者三様

 本書は、現代使用されていない言語とその文字いわゆる「古代文字」の研究者がその体験を書き記したものです。3人の著者による得意分野は楔形文字、ヒエログリフ、フェニキア文字など多種に及び、数少ない出土遺物から内容を調べる仕事を務めています。

 本書では古代文字研究に至るまでの道のりやその日常、古代文字にまつわるちょっとした出来事などを三者三様に語っていきます。「言語学者はつらいよ…」(本書17ページ)で始まるように、仕事として研究するには難しいところがあるようですが、それを上回る古代文字に対する情熱が彼らを突き動かしているのです。

古代文字研究者はラノベをたしなむか

 本書最初の著者・大山によれば「古代文字を最初に解読する時も、普通は(中略)別の言語と併記された資料を手がかりにする方法」(本書33ページ)が一般的であり、ヒエログリフが解読されたのもロゼッタ・ストーンの発見が大きな手がかりになったのは有名な話。しかしながら多大な労力の末にやっと解読されたのがしょうもない文面だったりするのが古代文字であります。

 さてそんな著者は仕事の関係上、読書量の多さは当然でありますが、息抜きに読んでいたのはいわゆるライトノベルでありました。「なろう系」の「流行の移り変わりをすらすら書ける程度」(同51ページ)の読書量で、やはり文字を読む行為には並々ならぬ興味があるのでしょう。

みんな大好きヒエログリフ

 打って変わって古代エジプトの研究者である著者・大城が語るのは、古代エジプトの文字・ヒエログリフとそれに魅了される人々について。「日本人はヒエログリフが好きである」(本書118ページ)として、エジプト神話の一柱・メジェドのグッズが日本で人気である事象などを引き合いに出したりします。

 また、フェニキア人の研究をしていた著者・青木は、主要な記録を残さなかったフェニキア人を解明するため古代ギリシア人など周辺民族の遺跡をたどり、その中からフェニキア人の痕跡を探す体験を語っています。そして学業を飯の種としない生活を求めた経緯が綴られ、本書の中でも変わった人生が見られます。

古代文字の解けない謎を解く

 著者たちの経歴は違えど、共通しているのは古代文字に惹かれ、その謎を解くことに魅力を感じていること。そしてそれを通じて分かるのは、言語の違いはあっても人間の営みは基本的に変わらず、他愛もない事柄に一喜一憂しているのは古代も現代も変わらないということでしょう。

 世界には未だ解明されていない言語や、文化継承がなされず使用されなくなる言語もあります。少なくとも著者らが古代文字に取り憑かれたのは、どこにでも転がっているようなテレビ番組やアニメ映画がきっかけだったわけで、「謎」は突然人の前に現れるのかもしれません。

「古代文字を解読していたら、研究に取り憑かれた話」大城道則・青木真兵・大山祐亮 著 ポプラ社 1760円(税込)

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