悪魔くん 見えない学校と十二使徒(上・下)

 新作アニメも制作された水木しげるの代表作、「悪魔くん」。初めてテレビアニメ化されてから40年近く経とうとしています。「悪魔くん 見えない学校と十二使徒(上・下)」(以下、本書)はテレビアニメ版をコミカライズしたものです。


40年ぶりの「悪魔くん」

 本書は漫画雑誌「コミックボンボン」で連載された「悪魔くん」を文庫化したものです。1988年から始まった本作は、同時に展開されたテレビアニメ版(以下、アニメ版)と歩調を合わせて描かれ、「悪魔くん千年王国」(以下、「千年王国」)や以前に実写化された原作となったバージョンなど、数ある「悪魔くん」のバリエーションの一つになります。

 稀代の天才少年・埋れ木真吾が悪魔研究家・ファウスト博士に見出され、十二使徒と呼ばれる悪魔(妖怪)を召喚する「悪魔くん」となって理想の世界を築くため戦う、とのあらすじは「千年王国」と同じ内容ですが、敵の妖怪に対し、悪魔・メフィスト2世と協力して戦う初期の展開は実写版を彷彿とさせます。

夢が結んだ十二使徒?

 そんなわけで本書ではしばらくアニメ版と違ってほとんどの十二使徒がモブキャラ扱いでした。中にはアニメ版に登場していない面子もおり、どちらかといえば悪魔くんの同級生・貧太と情報屋の出番が多いのが前半の特徴です。しかし、魂を抜かれたメフィスト2世の代わりに十二使徒の一人・幽子が登場してから使徒たちの出番が増えてきます。


 連載が続くに連れ、百目がレギュラー化の上(「ゲゲゲの鬼太郎」におけるねずみ男ポジションの)こうもり猫もアニメ版に近くなります。鳥乙女やサシペレレなど他の使徒の見せ場も増え、かなりアニメ版に寄せた(編集者の要請か?)内容になっていきました

手ごわい敵は、ウジャウジャいるぞ!

 かたや敵となる妖怪は、フォービやズー、(アニメ版にも登場した)ゴーレムなど、かつて水木しげるが児童書で描いた西洋妖怪たちが相手となります。特にエルフは現在のイメージと全く違ったデザインで、時代的に見て(以降日本のエルフ像を決めた「ロードス島戦記」の連載が少し前の時期に存在した)独特に思えます。

 そしてラスボスはアニメ版と同じく東嶽大帝でありますが、その最終決戦は一捻り効いたものでした。東嶽大帝の正体やメフィスト一家が絡む展開など、ある種アニメ版を裏切るように皮肉めいた終わり方は水木作品ならではの、ハラハラさせながらも普通の少年漫画に終わらない作りといえるでしょう。

やっぱり、水木しげるの漫画だった

 そんな漫画としては十分な内容の本書。そのうえで脱力系のノリで進む水木テイストはしっかり保持しています。「トン・フーチンの巻」(本書上巻227ページ)で見られる、街が死者に乗っ取られる展開は不気味さとユーモアが共存している本書を象徴したエピソードでしょう。

 鼻息を荒らげるときの「フハーッ」、念を込めるときの「ポークショッ」など独自の擬音に、本拠地「見えない学校」の入口がトイレ(「今日からマ王」?)などのナンセンスな箇所は、間違いなく水木しげるの作品といえます。

「悪魔くん 見えない学校と十二使徒(上・下)」水木しげる 著 中公文庫 990円(税込・上下共)

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