近年、プラモにおいてアニメや漫画などの2次元を意識した塗装が一つの流れになっています。それにはカラーイラストに関する知識が必要となるでしょう。「光と色のチュートリアル」(以下、本書)は色の表現を理論的に解説したものです。
マグロと魔法使いが解説する光と色
本書は絵画技法書「チュートリアル」シリーズの一冊で、光の理論を中心にして色の表現を解説するものです。シリーズでおなじみのマグロの頭をした著者の自画像と、光を扱う魔法使いのキャラクターが豊富なイラストとともに光と色の仕組みを解説していきます。
光がどういうものなのかは理科で学ぶ一般的な知識ですが、「光が色を作る原理は、色塗りにはとても重要な知識」(本書9ページ)として、コラムで示される知識とともに光が色を生み出す仕組みや、それをイラストに応用する方法を本書は説いていきます。
色相環とスライムがキャラ付けされていた件
本書では先の魔法使いがスライム(もしくは「ぷよぷよ」)のような物体に光を当ててその姿や色を浮き出す様子が描かれます。物体の頭上にはアプリケーションにあるようなスライダがあり、それが移動することで属性が変化していきます。描画用アプリを知っている人には原理がわかりやすいでしょう。
色を構成する色相、明度、彩度の三要素。本書ではその一つ、色相を表す色相環に顔が描かれキャラクター化されています。色を感じるのはあくまでも脳の働きであり、その脳すらもキャラ付けされて要所要所に現れるなど、本書の内容を理解しやすくするため、過去の画家からアインシュタインまで様々なキャラがその中身を飾っています。
アナログで塗るか、デジタルで塗るか
本書は技法書である以上、後半では具体的に画像ソフトを使った描画法を解説しています。それまでに述べられた色相、明度、彩度を総合したバリューを意識しつつ、セル画塗りやいわゆる「グリザイユ画法」(本書ではグレージング)など様々な描画法を、著者が描いたイラストを用いて解説していきます。
アナログにせよデジタルにせよ光が起こす現象を再現し、それを画面に描いていくのが絵画であります。本来の用途である写真加工用ソフトを絵画に応用するのは、光学的な変化をプログラムで再現するソフトの本質からすれば当然の帰結でありましょう。
光を知らなければ、色で伝えられない
本書では金属反射、透過、空気遠近法など光学的現象を(ラブコメのたとえを用いるなど)コラムで解説しており、その理屈が分かれば絵画に応用するのは容易いこと。しかし、自然の光を再現するだけが絵画表現ではありません。「彩色に正解は無い!」(本書136ページ)と、描く側のセンスで効果的な配色をするのも表現のひとつなのです。
しかし、文法がわからなければいくら言葉を覚えていても他者に伝えられないように、「光は文法、色は言葉」(本書9ページ)の言葉は絵画表現も同様であることを言い表したものであります。そんな光の文法を学ぶために本書は有効といえるでしょう。
「光と色のチュートリアル」パク・リノ 著 金智恵 訳 マール社 2200円(税込)