「超時空要塞マクロス」で可変戦闘機・VF-1バルキリーをデザインした河森正治とともに、メカデザインを担当したのが宮武一貴。「宮武一貴のアド・インエクスプロラータ 明後日の空へ」(以下、本書)は、彼の著作を集めた作品集です。
SFメカデザインの第一人者、つれづれなるままに
本書はメカデザイナー・宮武一貴(みやたけ・かづたか)の著作集です。表題作であるイラストエッセイ「アド・インエクスプロラータ」(以下、「ADI」)と「SFマガジン」で連載された「スタジオぬえのスターシップ・ライブラリィ」(以下、「SSL」)、夫婦共作の「アドバンスド・アプサラス」(以下、「AAP」)の3本で構成されています。
「日本にSFという概念を根付かせたクリエイティブ集団『スタジオぬえ』」(本書004ページ)に所属していた著者。SF小説「宇宙の戦士」の挿絵に描かれた機動歩兵(本書にデフォルメイラストを掲載)のデザインや「マジンガーZ」の内部図解を手掛けるなどその仕事は多岐にわたり、本書の内容もその一環であります。
可変戦闘機に「バルキリー」と名付けたのは私だ
「ADI」は航空模型専門誌「隔月刊スケールアヴィエーション」で連載されただけあって航空機を題材にしたコラムが多いわけですが、最初に扱ったのは米軍で開発された超音速機・XB-70について。表紙にも描かれ、他ページにも幾度となく描いているように、著者にとって思い入れのある機体です。
「ADI」ではXB-70とVF-1、実機と架空、2種のバルキリーを描いており、アニメの可変戦闘機に「力ずくで(同じ)名前をつけちゃった」(本書126ページ)旨が語られます。また最後には著者の処女作「スーパーバード」の架空戦闘機にも触れられ、航空機(特に超音速機)が著者の根底に流れるテーマの一つなのがうかがえます。
リアルな「宇宙戦艦」とは?
そして「SSL」はSF小説に登場する宇宙船をビジュアル化するイラストコラムで、1978年から81年にかけて連載されたものです。タイトル通りスタジオぬえ(以下、「ぬえ」)のメンバーが文章を担当し、本書では著者がイラストを担当した回を収録していますが、本編に負けない文章の書き込みで単体でも楽しめる内容といえるでしょう。
連載中盤になると宇宙戦艦をSF的に定義しようとする内容になっており、「極く特殊な場合を除いて(中略)有人戦艦はナンセンスであります」(本書057ページ)との結論を導き出します。「宇宙戦艦ヤマト」に参加していた「ぬえ」としては、ツッコミどころのあるその設定に一言申さねば気がすまなかったのかもしれません。
宮武一貴の女性像と、自画像のぬえ君
そんな「SSL」にはイラストのそこかしこに「ぬえ」のマスコットキャラクターが描かれており、その可愛らしい姿には著者の遊び心が感じられます。時代を経た「ADI」でも著者の自画像として登場、そのアイデンティティに染み付いているのでしょう。
著者の設定画には、しばしば作中の女性キャラを描いたものが見られました。本書では「考えてみると、女性の姿が描けたのはアン・フランシスと(中略)バルキリーおばさんだけなんだよ」(本書022ページ)と不満げな様子が見られます。「AAP」のイラストは著者の妻・L,Catoによるものであり、その意味では著者による女性像のイラストをもう少し収録してほしかったところであります。
自宅火災と妻の死という不幸に見舞われた後に「ADI」を執筆した著者。「精神的な新たな構築ができました」(同127ページ)との言葉は一つの安堵を感じさせます。
「宮武一貴のアド・インエクスプロラータ 明後日の空へ」宮武一貴 著 大日本絵画 4950円(税込)