ガンプラブーム以降、いわゆるリアルロボットアニメの商品展開はプラモが中心となっていきました。それがキャラクターモデルの急激な進歩に繋がったのは知ってのとおり。「’80年代ロボットアニメプラモデル変遷記」(以下、本書)はその時代を振り返る一冊です。

プラモと共に広がった富野作品
本書は「機動戦士ガンダム」(以下、「ガンダム」)の富野由悠季が監督したテレビアニメ「伝説巨神イデオン」(以下、「イデオン」)「戦闘メカザブングル」(以下、「ザブングル」)「聖戦士ダンバイン」(以下、「ダンバイン」)におけるメカデザインとプラモを中心として掘り下げたものです。
80年代前半に富野は、スペースオペラ、西部劇、ヒロイックファンタジーなど、多彩な舞台背景のリアルロボットアニメを量産しました。そこで活躍する巨大ロボットもそれぞれの世界観に合わせてデザインされており、そのバリエーションあふれるメカたちは次々とプラモ化されていきました。
アオシマ、(模型の)歴史を駆け抜けて
その一つ「イデオン」のキット化を担当したのが青島文化教材社(以下、アオシマ)。「ガンダム」の直後に放送された「イデオン」の主役メカ・イデオンは合体ロボだったため、当初は児童向けのフォーマットで商品化されますが、ガンプラブームが盛り上がるにつれ、その商品展開を大きく変えることになります。
まずは同サイズでイデオンだけではなく敵側の重機動メカをほぼ全て立体化、さらに1/600の共通スケールで各メカを再びキット化するという、まるでキャラクターモデルの歴史をなぞるような展開を見せました。本書ではその意気込みを、当時のアオシマ開発者へのインタビューでうかがうことができます。
リアルロボットアニメを支えた二人の巨人
本書で扱われている3作品の全てに関わったアニメーター・湖川友謙。作画の中心的な立場上、各作品のキャラクターデザインだけではなくメカニックを魅力的に描く役割も果たしていました。本書のインタビューでは「デザイン画のまま描けるアニメーターはいません。ですから、なるべく誰もが描きやすくなるように調整する」(本書114ページ)自らの仕事を語っています。
そのデザイン画を担当した人たちの中でも「ダンバイン」に登場するオーラバトラー(以下、AB)だけではなく、舞台となる異世界バイストン・ウェルのコンセプトまで担当したデザイナー・宮武一貴に話を聞いています。同作のたたき台を構築した意味でも、その仕事は大きな意味を持つといえるでしょう。
読めば旧キットが作りたくなる?
歴史的にも独自なデザインの巨大ロボットを連発したこの時代、本書には当時のキットたちを紹介するページもあります。「ザブングル」のウォーカーマシンや「イデオン」の重機動メカは現在でも遜色ない出来ではありますが、主役メカやABのキット化は、当時としては難しかったのかもしれません。
そんな中「岡プロの『モナカキット』ガンプラ改造講座」の著者によるABキットの改修例があり、ほんの少しの手間で見違えるほど見栄えが良くなるのがわかります。紹介されたいわゆる旧キットは再販されることもあり、そのポテンシャルの高さを実際に手にとって再確認したくなるほどの情報が本書にはあります。(Re)
「’80年代ロボットアニメプラモデル変遷記」ホビージャパン編集部 著 ホビージャパン 2970円(税込)