「マジンガーZ」と並ぶスーパーロボットの代表格、「ゲッターロボ」。半世紀の長きに渡って派生作品を生み出していくその姿は、まるで作中のゲッターロボのようであります。「THE COMPLETEゲッターロボ」(以下、本書)は、その歩みを一冊にまとめたものです。
ちったあおどれえたか、これがゲッターロボの全てだ!
本書は、1974年にテレビアニメと漫画連載が始まった「ゲッターロボ」に関する歴史を収録した一冊です。知っての通り、3機のメカが合体して3種類の姿に変形するゲッターロボが様々な敵と戦う本作、半世紀を過ぎ原作漫画を発端として派生作品が次々に生まれています。
本書はその原作漫画、アニメ、外伝作品などを網羅し、かつて同社から出版された「ゲッターロボ大全」の後継書籍となっています。当時と比べて作品数も増えたがゆえ詰め込みすぎのきらいもありますが、(2025年現在)膨大になったシリーズを俯瞰するには妥当なところなのでしょう。
これから先、きさまに地獄を見せる漫画だ!
先に述べたとおり「ゲッターロボ」はテレビアニメと並行して、永井豪と石川賢によるコミカライズが行われました。しかし、アニメ版よりもバイオレンス描写が際立つ漫画版(以下、原作版)は読者にインパクトを残し、翌年の続編「ゲッターロボG」で一つの区切りを迎えます。
平成を迎えた1991年、再びアニメと同時に石川賢によって「ゲッターロボ號」(以下、「號」)が連載されます。アニメ版との乖離を広げながら終盤には旧作のゲッターロボをリファインしたいわゆる「真ゲッターロボ」(以下、真ゲッター)を登場させ、さらに大風呂敷を広げた物語を畳むことになります。
真ゲッターはゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズに登場し、人気を博します。それを受けて2001年、さらなる続編「ゲッターロボアーク」(以下、「アーク」)が連載開始されますが、掲載誌の休刊と作者・石川賢の急逝により完結を見ず、「先にある未来像は後続の創作者たち(中略)に永遠に託されることとなった」(本書090ページ)のでした。
3つのメディアが一つになれば
本書では原作版とアニメ版でページ分けしており、2つの違いや共通点をコラムで解説しています。「號」まではその違いが大きかったものの、「真ゲッターロボ 地球最後の日」以降のOVAでは(設定の違いはあれど)原作版のテイストを重視した作りになっており、「アーク」に至っては原作再現の上、オリジナルの展開で完結させているのです。
さらに「ゲッターロボ飛焔」「ダイノゲッター」など石川賢以外の作家による漫画作品も紹介、いずれも原作版に盛り込まれた設定を活かす形で独自のストーリーを展開しています。アニメ版でも外伝作品でも「融合と拡大」を基調とする原作版へのリスペクトが見られ、「ゲッターロボ」が今に続くコンテンツとなる原動力がそこにあるのは間違いないでしょう。
友よ、自分の胸に聞け
本書巻末には、原作版の共著者でありダイナミックプロでの盟友だった永井豪のインタビューが掲載され、原作版の作画を石川賢に任せ、アイデアを提供しながら互いに作り上げていった経緯が語られます。それ以降石川賢の代表作となった「ゲッターロボ」。それらをまとめ(生涯に描かれた読み切り作も含めて)「ゲッターロボサーガ」と呼ばれるほどの長編に進化したのは知ってのとおり。
もはやサーガの終着点を見ることは叶わぬ同作。作中で触れられた、ゲッター線が導く進化の果てはいかなるものか。それは作品に触れた人々の中に存在し、いつか新たに「ドワォ!」と飛び出すのかもしれません。
「THE COMPLETEゲッターロボ」ダイナミック企画 監修 双葉社 3520円(税込)