今は昔、「超クソゲー」なる書物ありけり。ある人、再びその書よみて、「濃しといわれしが、出がらしとなりにし」とぞ言ひけむ。
という適当な古語訳はさておき、今回は「超クソゲー」の再編集版第二弾、「超クソゲーVR」(以下、本書)の紹介であります。
超クソゲーVR税込1,210円(2024/04/16時点)カラーで送る「超クソゲー」補完計画
本書は「超クソゲー1+2」(以下、前作)では入りきらなかったクソゲーのレビューが大半ですが、「超クソゲー」シリーズ名物のゲーム開発者インタビューに「『マイケル・ジャクソンズ ムーンウォーカー』を創った男」と「『たけしの挑戦状』を創った男」が掲載されており、オリジナル「超クソゲー」(以下、オリジナル)の一端がうかがえます。
ページもモノクロからカラーになり、オリジナルで何が写っているかわからなかったゲーム画面もはっきりするというもの。
日本よ、これがマイナーハードのクソゲーだ
本書ではファミコンやスーファミのゲームは紹介していません。それは前作で堪能してもらうとして、「新作レビューはみんな大好きPCエンジンのものばかり」(本書003ページ)というわけで、90年代前半における次世代機の一角をなすPCエンジンのクソゲーを紹介しています。
- PCエンジン最初期のソフトでありながら、「巨大キャラが動く」というデモンストレーションにしかならなかった「THE功夫」
- 専用ハードであるPCエンジンSG(スーパーグラフィックス)が売れなかったので存在自体がベリーレアになった「バトルエース」
- これぞ文字通りのクソゲー、トイレ周りのモチーフに徹頭徹尾こだわったシューティングゲーム「トイレキッズ」
などなど、香ばしいラインナップになっています。
「セガってダセーよな」と言ったのは、誰だ
前作ではメガドライブのクソゲーを紹介しましたが、本書では同じセガ製のハード、セガサターンとドリームキャストのクソゲーがメインです。いずれも他社のゲームハード達に果敢に挑み、そして勇敢に散ったハードだけに、クソゲーも一癖あるものばかりです。
- 「ギャルゲーバブルを象徴する伝説のシミュレーション」(本書064ページ)で、ゲーム発売前に関連グッズが売れまくった末、結果的に「ゲームを発売しなくてもいいんじゃない?」(同)という出来になってしまった「センチメンタルグラフィティ」
- 元はPS1上で美少女と「ビジュアルフォン」(今で言うところのリモート)で会話するゲームだったのに、サターンで出た本作は美少女をテロリストから救うハッキングゲームになってしまった「NOёL3」
ドリームキャストでは、
- B級ホラー映画のテーマパークを命がけでクリアせよ!エロ・グロ・ナンセンス、三拍子そろったホラーゲーム「イルブリード」
- 「傾いたセガの経営を立て直す」(本書154ページ)のが目的という、自虐にもほどがあるセガ謹製のゲーム「セガガガ」
という主流になれなかったゲームハードならではの独自すぎるゲームが紹介されています。
ベリーレアなハードとソフトの物語
本書のタイトル、「VR」は「ベリーレア」の略ということで、前掲の「バトルエース」や「セガガガ」など、あまり知られていないゲームハードやソフトにからめたレビューも多く、巻末にはウインドウズ以前のパソコンゲームやアメリカのメーカー、アタリのゲームハード「ジャガー」のゲームなど、よりレアな作品が紹介されています。
そうしたゲームは存在が一般的に知られてないだけで、再評価する意義があるものばかりです。「超クソゲー」ならではの基準があるとはいえ、こうして語られる機会があるのはゲームにも読者にも幸せなことかもしれません。
「超クソゲーVR」多根清史・阿部広樹・箭本進一 著 太田出版 1100円+税
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