黒光りした本体、金メッキの16BITロゴ、振るとカラカラ音がするなど、ハードのデザイン込みで愛された家庭用ゲーム機はメガドライブの他には見当たらない気がします。「増補新版 メガドライブパーフェクトカタログ」(以下、本書)はそんなゲーム機に関する一冊です。
逆襲のセガ、その第一歩
本書は、1988年に発売されたセガのゲーム機・メガドライブ(以下、メガドラ)のハードとソフトを網羅した一冊、その改訂版です。知っての通りファミコンと同時期にゲーム機を発売したセガはファミコンブームの前に敗北、それを覆すべく投入された新型機がメガドラだったのです。
X68000と同様の16ビットCPUを搭載し、いとうせいこうを採用したCMで華々しくデビューしたメガドラではありましたが、本格的にサードパーティ制を敷きながらメジャーなソフトメーカーは集まらず、序盤は苦戦しました。皮肉にもX68000でゲーム制作していたソフトメーカーが初期のメガドラソフトを支えていたのです。
世紀の対決、メガドラ対スーファミ
「大魔界村」や「ストライダー飛竜」など、性能差をものともしないアーケードゲームの移植で頭角を現したメガドラ。ファミコンの衰退に伴いPCエンジンとともに家庭用ゲーム機の一角をなしていましたが、90年代に入ってからはファミコンの後継機・スーファミの登場で再び任天堂と対決することになります。
セガは海外展開を見越してアクションゲーム「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を発売し人気を博したものの、当時の日本市場においては「ドラゴンクエスト」などのRPGや「ストリートファイターII」でブームになった格闘ゲームが主流であり、どちらも擁したスーファミの前に今一歩及ばずの結果になりました。
洋ゲーの力、お借りします!
しかし、メガドラはマスターシステムで培った海外市場を基盤に国外では大人気、本書に収録された海外版ソフトの国内版を超える点数にそれが現れています。日本に海外のゲームいわゆる「洋ゲー」を広めたのは、海外版ソフトを積極的に移植したメガドラの功績が大きいのかもしれません。
(一部の人気作を除き)高難易度、リアルでクドいキャラ、プレイヤーを突き放したようなゲームシステムなど、洋ゲーは日本のユーザーから良いイメージを持たれなかった側面はありますが、そんな中から傑作を探し出し、洋ゲーをストイックに遊んだ人は確実にメガドラユーザーの一部に存在していたのです。
Get ride! メガドライバー
洋ゲーに限らずメガドラとソフト、そしてセガをこよなく愛する人々、それを「メガドライバー」と呼んだ時代がありました。「欠点や限界も知ったうえで(中略)自らの意思でメガドライブファンを自認していた」(本書008ページ)彼らに向けて「for megadriver’s custom」と銘打った「エイリアンソルジャー」が発売されるほどに浸透していた言葉でもあります。
発売から35年が経ち、家庭用ゲーム機の雄としてセガの人気を押し上げたメガドラ。本書では近年発売された「メガドライブミニ」や互換機用に開発された新作ゲームまで収録、これらの存在はメガドラに対する愛情が現在までも続いた結果なのかもしれません。(Re)
「増補新版 メガドライブパーフェクトカタログ」前田尋之 監修 ジーウォーク 3960円(税込)