吉田徹 10分で女性を描くコツ250

 アニメを見ていて特徴のあるメカやエフェクトを目にすると、必ず名前が上がるのは吉田徹という名前。「吉田徹 10分で女性を描くコツ250」(以下、本書)はアニメーターである著者が描いた女性像を集めた一冊です。

吉田徹10分で女性を描くコツ250税込2,090(2025/03/17時点)

楽しく描いてこその10分間

 本書は「装甲騎兵ボトムズ」「蒼き流星SPTレイズナー」などで躍動感あふれるメカやエフェクトを描いたアニメーター、吉田徹が描いた女性の鉛筆画を集めたものです。ただ、「『女性を模写する方法』等の教則本ではありません」(本書022ページ)。

 それらは著者がリクエストに答えて描いたもので、その中でも写真をもとにした女性像を一同にまとめたものが本書になります。そのすべてが10分間で描かれており、数をこなすことが求められるアニメーターらしく、ラフなタッチでありながら完成度が高いのがわかるでしょう。

写真の真似ではない、ひと工夫

 それらは写真そのままではなく、元となる写真から受けた印象や気になるポイントを抽出した、あくまでも自分の絵柄で描かれています。それでもリクエストした人たちからは評価され、練習がてらとはいえ著者のスタイルは一定のクオリティを確保しています。

 タイトル通り250点の作品には各々に、描くときのポイントがコメントされています。写真はあくまでも素材であり「絵にする際に、紐を付け足してアクセントにしました」(本書094ページ)のように、作品にするために多少のアレンジを施している旨が綴られており、自家薬籠中にしているのがわかるでしょう。

フェティシズムはどこにある?

 元になる写真の中には、水着姿や露出度高めなものもあります。直接的でなくともセクシーな雰囲気を醸し出すものがあり、本書では章分けされ一つにまとめられています。その分それらは描かれるポイントが分かりやすい、ということでもあります。

 本書のコメントにも「この絵は、ここだけをこだわっています」(本書078ページ)と明確に力点をおいた部分を示し、お腹の曲線、紐が肌に食い込む様子、わきの下などフェティシズムが感じられる描写がうかがえるでしょう。もちろんそれだけではなく、可愛らしさや服装に重点を置いたページもあります。

Lonely way,この筆の赴くまま

 「クロッキーやデッサン、いわゆる王道と言われる作画技術を習ったことがありません」(本書174ページ)と語る著者。しかし本書の内容はそんな下地を持たないながら、アニメの一線で活躍した著者ならではの技術力がいかんなく発揮されているのは一目瞭然。

 本書後半で画材を変えて描いてみたり、利き手の反対で描いてみたりと上達につながる試みを載せており、単なる画集というよりは、少なくとも「楽しく女性を描く術」(本書175ページ)の教本としても楽しめるのではないでしょうか。

「吉田徹 10分で女性を描くコツ250」吉田徹 著 玄光社 2200円(税込)

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