「プラモを作るなら、工具は十分揃ってるよ」と思っていませんか。その人なりの作り方はあるにしろ、もしかしたら今までより便利になる工具があるのかもしれません。「新・モデルテクニクス2」(以下、本書)は最新の模型製作事情を調査した一冊です。
まだまだあるぞ、最新模型用ツール
本書は模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」の特集記事を単行本化した第2弾です。今回は発展著しい模型用ツールと、これからの主流になりつつあるデジタルモデリングを中心にした構成になっています。前作が基本的な作業に関するものと対象的に、本書は知っておいたほうが便利な新技術を掲載しています。
超音波カッターやヒートペン、モーターツールなどの模型用に特化したツールや紫外線硬化パテやキサゲなど改良を加えられた工具の概要を紹介、また前作と同じくエアブラシや塗装ブースのメンテナンスを解説しており、口を酸っぱくしても伝えたい情報であります。
塗料メーカーの新星、そのすべて
設立から10数年、地歩を固めている模型用塗料メーカー、ガイアノーツ。本書ではキャラクターモデル用からフィギュアの肌を塗るためのものまで、かゆいところに手が届く製品を開発する同社に取材し、製品の概要から使い方などを解説しています。
さらに瞬間接着剤の要領で硬化する瞬間パテ、筆の手入れ用洗剤、塗料の臭気を抑える消臭剤、果ては手に付着した塗料を落とす洗剤まで、塗料だけではなく塗装周辺の環境を整えるマテリアルを独自に開発した同社の努力とアイデアには頭が下がる思いです。
デジタルモデリングとは何者だ?
3Dデータを作り、3Dプリンタで出力するデジタルモデリング。本書では2023年を過ぎようやく一般的になってきた造形法の現状を解説しています。データを生成するためのパソコンとソフト、そして3Dプリンタはどんな物があるか、その概要を一覧できるでしょう。
これまでの模型作りと勝手が違うこともあり、デジタルモデリングに対する印象は賛否両論あるようですが、少なくとも本書の中では雑誌記事で使われた例を掲載、キャラクターモデルやスケールモデル(特にカーモデル)様々な用途で活躍していることがわかります。
模型作りが楽になるとは、長生きはするもんだ
いずれにせよ現在のデジタルモデリングには、データさえあればシリコンゴムを使った複製に頼らなくてもすむ一方、環境整備のハードルの高さなどまだ一長一短があり、今までになかった手作業の工程も多くまだ「炊飯器のように気軽に家電感覚で使える」(本書95ページ)とは行きません。それゆえ適材適所で従来のアナログモデリングと住み分けるのが必要になります。
現在は模型製作の変革期ともいえ、「長生きはするもんだ」などと年寄り臭いセリフが出てしまうのも無理からぬことであります。それでも「これが作りたい」という人の意志が原動力になってこその模型であり、素材や製法が変わっても模型製作は形を変えて続いていくものなのでしょう。
「新・モデルテクニクス2」モデルグラフィックス編集部 編 大日本絵画 4180円(税込)