X68000パーフェクトカタログ

 古今東西の家庭用ゲーム機写真を網羅した「ゲームコンソール2.0」には掲載されていない、ゲーム機として用いられたパソコンがあります。その一つ・X68000について記録したのが「X68000パーフェクトカタログ」(以下、本書)であります。

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X68000パーフェクトカタログ (G-MOOK) [ 前田尋之 ]
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実は「パーソナルワークステーション」なんです

 本書は1987年に発売されたパソコン・X68000(以下、X68K)についてハードと(主に)ゲームソフトの情報について書かれた一冊です。X68Kを発売した家電メーカー・シャープはホビーパソコン・X1で一定のシェアを獲得していたものの、新たに「パーソナルワークステーション」としてより高性能な機種を開発しました。

 CPUに68000を採用、「マンハッタンシェイプ」と呼ばれた機能性あふれるデザインのボディ、マッキントッシュと同じくマウスでの操作を実現したOSなど、ビジネスユースを念頭に置き当時の最新技術を盛り込んだパソコンとしてデビューしたX68Kでありましたが、初期モデルに同梱されたアーケードゲーム「グラディウス」移植版の存在がその運命を決定づけることになります。

その高性能、昔から憧れていました

 ハードのデモンストレーションとしてその高性能を活かし、オリジナルに限りなく近い移植を実現したX68K版「グラディウス」はユーザーに「アーケードゲームが遊べるパソコン」と印象づける結果となり、早くから「スペースハリアー」「源平討魔伝」などの移植作がリリースされることで、X68Kは「最高級のゲーム機」に仕立て上げられました。

 とはいえ、それにかかるコストは膨大で(本体価格だけでも同じ68000CPUを搭載したメガドライブの20倍ほど!)、パソコンならではの拡張性を使い専用ジョイスティックやMIDI音源に対応し、よりオリジナルに近いプレイ環境を求めるソフトも発売されました。それらを買い揃える猛者もいた一方、多くのゲーマーにとってX68Kはおいそれと手の届かない垂涎の的だったのです。

「TAKERU」にはお世話になりました

 テレビ番組「神田伯山のこれが我が社の黒歴史」で紹介されたパソコンソフト自販機・TAKERU。番組では黒歴史とされる失敗作として語られたTAKERUも、パソコンユーザにとって便利だったのも事実。市場規模の小さいX68KではTAKERUを通して発売されるゲームもあり、その恩恵を受けたユーザーも少なくありません。

 それまでの資産活用もない一からのスタートであったX68Kは「必要な開発用ドキュメントや仕様が一通り公開されていた」(本書044ページ)こともあって、技術さえあればソフトを開発できる環境にありました。それゆえ新興ソフトメーカーがX68K用のアクションゲームやシューティングゲームを開発し、それを足がかりとして家庭用に移植されるものも現れました。

 ウルフチームの「グラナダ」、ファミリーソフトの(格闘ゲームの隠れた傑作)「あすか120%」、そしてズームのPS1用ゲーム「ゼロディバイド」のおまけとして入った「ファランクス」も元はX68Kのゲームだったのです。

ウィンドウズ以前の国産パソコン最後の輝き

 90年代に入りDOS/Vパソコンと今に続くOS・ウインドウズの普及によって、国内パソコン市場は各社が独自規格で覇を競う時代に終わりを告げます。その寸前にX68Kは役割を終え、その個性あふれるハードは伝説のパソコンとして一部の人々の記憶に刻まれる存在となりました。

 それはX68Kが先のゲーム制作やMIDI音源によるデスクトップミュージックなどユーザーの創造力を刺激する仕様であり、「X68000に触れたユーザーから各分野のプロフェッショナルへと育っていった人間は数多い」(本書003ページ)と以降のクリエイターに多大な影響を与えたパソコンだったからにほかなりません。(Re)

「X68000パーフェクトカタログ」前田尋之 監修 ジーウォーク 2546円(税込)

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