タカラSFランドエヴォリューション

もはや食玩としてアクションフィギュアが売られているのも珍しくはありませんが、それらが広まるきっかけとして50年前に発売された玩具たちを忘れるわけにはいきません。「タカラSFランドエヴォリューション」(以下、本書)は昭和の時代に子供を熱くさせた玩具を網羅したものです。

男の子向けでも「人形のタカラ」

 本書は玩具メーカー・タカラ(現タカラトミー)が発売した、アクションフィギュア(以下、AF)を中心とした玩具を集めたものです。タカラは早くから着せ替え人形「リカちゃん」のヒットにより、「人形のタカラ」とのブランドイメージが定着していました。しかしながら男の子向けでも「ニューGIジョー」「正義の味方」などの着せ替え人形玩具を発売していたのです。

 そして1971年、それらを継承する形で「変身サイボーグ」が発売されます。以降オリジナルSF設定をもとにAF玩具シリーズを展開し、のちにそのファンによって「タカラSFランド」と呼称されました。本書ではその主要な玩具と開発者のインタビュー、開発当初の設定や試作品などを掲載、その独自な世界を俯瞰していきます。

5ミリジョイントで、遊びがワイドだ

 「変身サイボーグ」は従来の1/6サイズAFを透明にし、胴体の空洞に機械パーツを内蔵して「悪の宇宙人と戦うサイボーグ」との設定を盛り込んで発売されたものです。(元来は着せ替え衣装のコストダウンから始まったものとはいえ)当時の特撮ヒーローブームに乗り、別売りのコスチュームを着せることでテレビのヒーローに「変身」させるコンセプトは子供に受け入れられました。

 74年、さらに小さい約1/20サイズのAF「ミクロマン」が発売されます。「地球にやってきた、手のひらサイズの宇宙人」との想像力を刺激する設定と、サイズの小ささによる乗り物や基地との組み合わせ遊び、5ミリサイズ共通ジョイントでの拡張性の高さが人気となり、10年近いロングシリーズとなりました。

 いずれにしろ、リカちゃんで培われた「着せ替え遊び」「ままごと遊び」を男の子向けにアレンジし、さらにSF風味を加味した上にAFの楽しさを提唱した(当時「マジンガーZ」のAFといえば「変身サイボーグ」の変身セットしか無かった)これらは当時の子供に大きなインパクトを与えたといっていいでしょう。

磁石の力でビルドアップ!

 「マジンガーZ」のヒットによりスーパーロボットブームが継続していた75年、タカラ初のタイアップ番組「鋼鉄ジーグ」が放送されます。「マグネモ」と呼ばれる磁石を使ったジョイントを用いて劇中と同様の合体を再現した玩具は大ヒット、同じギミックを用いた「マグネロボ」がシリーズ化されます。

 これは「ミクロマン」と無関係ではありません。サイズの小さい「マグネモ」は同シリーズの「タイタン」に採用され、5ミリジョイントはマグネロボも共通なので互いにさらなるプレイバリューを提供することになりました。

 「機動戦士ガンダム」が放送されたあとの80年、「ミクロマン」よりさらに小さい1/60サイズのAFで展開された「ダイアクロン」が発売されます。「侵略者と戦う特殊部隊」との設定に合わせ、「超時空要塞マクロス」などでデザインを担当したスタジオぬえによる、リアリティとヒーロー性を併せ持ったデザインの乗り物やロボット、パワードスーツで構成された玩具でありました。

かつて、関節を動かした子どもへ

 そんな数々のシリーズを生み出した「タカラSFランド」も、84年「ミクロマン」「ダイアクロン」の一部商品を「トランスフォーマー」として輸出したことで一つの区切りをつけます。しかし「電脳警察サイバーコップ」「電光超人グリッドマン」などテレビ番組の玩具でAFの系譜は受け継がれ、ついに90年代末「ネオ変身サイボーグ」「ミクロマン マグネパワーズ」として蘇りました。

 新世紀に入ると女性型AF「COOL GIRL」や「ミクロマン」「ダイアクロン」が大人向けホビーとして新たに発売、かつてのタカラSFランドで遊んだ人々に向けた商品展開は現在も続いており、これを受けてオリジナルAFは他社でも展開、現在のいわゆる「美プラ」にも繋がります。

 「玩具の遊びが中心にありきの、玩具主導型」「遊び手の空想力で遊びがワイドに広がっていた」(本書111ページ)タカラSFランドの信念は、半世紀経っても受け継がれているのです。(Re)

「タカラSFランドエヴォリューション」高谷元基(株式会社タカラトミー)監修 双葉社 2750円(税込)

One thought on “タカラSFランドエヴォリューション

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です