鋼鉄ジーグ(愛蔵版)

 1975年に放送されたテレビアニメ「鋼鉄ジーグ」は当時発売された玩具が大ヒット、マグネロボシリーズの先駆けとなった作品です。しかしその一方、ハードな展開で読者に衝撃を与えたコミカライズ版が「鋼鉄ジーグ(愛蔵版)」(以下、本書)なのです。

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(本記事は98年発行の双葉社版を参考にしている旨、ご了承のほどを)

コミカライズで描かれたもう一つの「鋼鉄ジーグ」

 本書の他にもダイナミックプロによる「鋼鉄ジーグ」のコミカライズ(以下、原作版)がありますが、1970年代は児童雑誌の多様化が進み、同一作品でも複数の漫画家によるコミカライズが雑誌ごとに連載されていました。本書はその一つであり、「夏子の酒」を描いた尾瀬あきらが別名義で描いたものです。

 あらすじは、「古代に日本征服を企んだ邪魔大王国の復活を察知した司馬博士は、息子の宙(ひろし)とともに王国の刺客に襲われ、瀕死の重傷を負う。しかし最後の力を振り絞り宙をスーパーロボット・鋼鉄ジーグの中核となるサイボーグに改造する。宙は父の遺志を継ぎジーグに合体、王国の送り込むハニワ幻人と戦う」といったもので、アニメ版、原作版と同じ展開ですが、本書では宙が父に対し快く思っていなかった、という心理描写が入ります。

展開されるハードな戦い

 これによって宙が理不尽な状況に巻き込まれた部分が強調され、以降ハードな展開の基調となっていきます。それがうかがえるのは2度目の戦いで、ハニワ幻人との戦いで脚部を破損したジーグは現れたもう1体のハニワ幻人に向けて移動すること叶わず、恐怖に駆られた市民たちに石と罵声を浴びせられるのです。

 結果、新装備・マッハドリルを駆使して事なきを得るのですが、宙は戦闘後にその不満をぶちまけ、敵を倒して万々歳とならないカタルシスに欠ける終わり方を迎えます。バイオレンスあふれる原作版とは違って全体的に戦いの重みを思い知らせるハードさが本書の持ち味といえるでしょう。

早すぎたアンチテーゼ

 本書における巨大ロボットが市民に受け入れられず、政府に都合よく使われる部分は、77年に放送された富野由悠季監督のテレビアニメ「無敵超人ザンボット3」との共通点が見られ、どちらもリアリティを重視したがゆえにロボットアニメのアンチテーゼとなった展開は同時代性が感じられます。

 それを代表するのは本書オリジナルキャラ・野々宮一佐のエピソード。自衛隊を率いて王国の要塞に攻撃するものの敗退、「それは極秘中の極秘事項」(本書115ページ)である核弾頭を盗み出しリベンジを図る彼に対し、政府がジーグにその機体の撃墜を命令する展開は綺麗事ではすまない戦いの厳しさを示唆し、以降野々宮の言葉が宙にのしかかってくることになります。

戦いは二人をどこへ連れて行くのか

 戦いが進み兵器としてパワーアップされるたび、人間の肉体を失う宙。彼を支えるのが幼なじみでありジーグパーツの輸送機・ビッグシューターのパイロットでもある卯月美和であります。二人の掛け合いはラブコメのようで、ハードな展開の本書では一服の清涼剤かもしれません。

 しかし王国の人質となった美和を取り戻すも重傷を負わせた宙は、非情に徹して王国の女王・ヒミカとの決戦に臨むことになります。原作版ではヒミカが滅び、新たな敵・竜魔帝王が出現するまでで終わっていますが、本書ではアニメ版と同じく竜魔帝王との決戦まで描かれています。

 「スーパーロボット大戦」に始まる平成スパロボブームの中で発掘された本作、ロボット漫画としては今ひとつ物足りないもののそれを補って余りある人間ドラマが魅力であり、一度目を通してはいかがでしょうか。(Re)

「鋼鉄ジーグ(愛蔵版)」永井豪 原作 松本めぐむ(尾瀬あきら)作画 復刊ドットコム 3080円(税込)

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