その昔郵便局でアルバイトをしていた時、手に取った封筒に描かれていた柴犬のキャラクター、それがしばんばんでありました。「しばんばん(1・2)」(以下、本書)はそのキャラクターを使った漫画の単行本です。
しばんばんって、いいやつだ
本書はグッズやSNSで知られるキャラクターを手掛けたイラストレーターによる漫画です。「しばんばんとは、どこかの誰かが飼っている柴犬たち」(本書1巻2ページ)で、柴犬のあるあるネタを基本にそこから突き抜けた作品も多数ある4コマ漫画(4コマ以外もあり)が癒やしを与えます。
子犬の「むちころばんばん」や各色のキャラ付けも明確(初期はまだ曖昧なところも)に、ちょっと間抜けで騒がしく、なおかつ可愛らしくデフォルメされてもディテール的にはリアルなしばんばん。実際の飼い主にも共感されるであろうネタを描いた著者は、柴犬を飼ったことがないのだとか。
お前の柴ドリルで天を突け!
そのリアリティがうかがえるのは「あーマズルが重い…」(本書1巻61ページ)と金網から鼻先を乗せたときに牙がむき出しになる描写や、排泄するときの「#うちのおきばりばんばん」(同38ページ)、長いものをくわえてコマ枠にぶつかるなど、キャラの可愛さに反する野性味が出る部分ではないでしょうか。
また、首を振って濡れた体の水滴を払う動作を撮影した際、首の残像がドリルのように見えるいわゆる「柴ドリル」、スマホで撮影しようとしても言うことを聞かない姿、そしてアマビエを登場させるなど、近年の風潮をネタにしたものが目立ちます。
前足飛び出すにゃばんばん
しばんばん2税込1,320円(2024/07/15時点)さて、本書に登場するのはしばんばんだけではありません。その飼い主はもちろん、猫も「にゃばんばん」としてしばんばんの前に立ちふさがります。といっても、しばんばんが興味を持って近づくのを猫パンチであしらうのがほとんどで、ページの隅に描かれた(某社製段ボールの中)しばんばんと一緒のにゃばんばんはさりげない注目ポイントでしょう。
また、犬の抜け毛を使ってぬいぐるみを作る人達がいるのを参考にしたのか、「天然ぬけ毛生命体モコさん」(2巻29ページ)なるキャラクターがファンタジーネタの代表格として登場します。そして、くろしばんばんのおもちゃ、ぬいぐるみの「ダイナ・ソー子」(2巻76ページほか)も(由来含め)強烈な印象を与えてくれます。
柴犬転生〜生まれ変わったら本気出す
ファンタジーといえば、高齢のじいじばんばんがいつの間にやら雲の上にいて、むちころばんばんと連絡を取っているネタや、肝試しイベントでしばんばんたちがこの世にいない先代犬たちと会話しているネタなど、ペットである以上避けられない寿命による別れをさり気なく扱っている部分が見られます。
本書には爪を切られたときの感情、飼い主のご飯を食べたい意思表示、寝ているときに飼い主にいじられる迷惑さなど、間で理解と笑いを表現する4コマならではの描写が、本当の柴犬もこうなのではないか、と感じさせられる説得力があります。とはいえ、かわいいしばんばんたちを楽しむ、それだけで充分なのですが…。
「しばんばん(1・2)」オオゴシヤステル 著 KADOKAWA 1100円(税込、1巻)1320円(税込、2巻)