スーパーファミコン&ゲームボーイ発売中止ゲーム図鑑

 テレビゲーム全盛期の雑誌には、ゲームの発売予定表がよく載っていました。その末尾に残り続けていたゲームたちは姿を消すこともあれば、別の形で復活することもあります。「スーパーファミコン&ゲームボーイ発売中止ゲーム図鑑」(以下、本書)はそんなゲームたちを扱った一冊です。

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発売中止ゲーム図鑑は、まだ終わっていなかった

 本書は「ファミコン発売中止ゲーム図鑑」の続編です。今回はファミコンの後継機・スーパーファミコン(以下、スーファミ)と、同じく任天堂の携帯型ゲーム機・ゲームボーイ(以下、GB)で発売が予定されながら様々な理由で商品化されなかったゲームたちの情報を収録しています。

 80年代のファミコンブームを受けて、拡大した家庭用ゲーム市場で中核をなした同機たちではありますが、それでも発売されなかったゲームがあるのは、全盛期ゆえの粗製濫造と無縁ではないでしょう。とはいえ仕様変更して復活したものもあり、本書ではそんな作品も網羅しています。

大作、洋ゲー、企画倒れ

 本書で見られる発売中止ゲームの傾向としては、

  1. 企画段階では続編や大作となるもの
  2. 洋ゲーの移植作
  3. キャラゲーの企画倒れ

 などが挙げられます。1.に当たるのは「トールキンの指輪物語 第一話」「シェラザード伝説 黄金の帝国」などで、特に後者は企画が二転三転を繰り返した末の発売中止となりました。2.に当たる「クレイファイター」「イッチー&スクラッチー」など海外で発売されながら日本では中止となったものは枚挙に暇がありません。

 3.に当たるものは漫画やアニメを原作とする中でも「タイガーマスク・ザ・スター」「デバステイター」などメディアミックスが不振に終わったものが挙げられますが、その中でもやはり最後まで発売予定表に残り続けた「ああっ女神さまっ」は歴史に残るものでしょう。

スーファミとPS1の微妙な関係

 本書で特筆すべきものはスーファミの周辺機器に関するものです。ファミコンとの互換をうたった「ファミコンアダプタ」などもありますが、やはり白眉はソニーの協力を仰ぎながら結果的に袂を分けた「CD-ROMアダプタ」とその周辺状況でありましょう。

 知っての通りスーファミに遅れてソニーが開発したPS1はCD-ROMを内蔵し、旧来のゲーム業界を席巻する勢いでシェアを獲得しました。もしも当初の通り任天堂とソニーが同じゲーム機を開発していたら現代に続く家庭用ゲーム機の2極化はなかったかもしれません。そのきっかけがこの時代にあったとすれば、歴史的にとても重要な局面だったのでしょう。

発売中止に潜んだタカラモノ

 本書の見どころは著者による独自のコメントですが、GB用ゲーム「小さな巨人ミクロマン ユーボーグ戦記2010」では「彼らは、(中略)創意工夫の魂と命を宿したホビー生命体である」(本書132ページ)と、ゲームよりもミクロマンに対する思いがあふれる熱いコメントになっています。

 前作と同様に当時の雑誌から引き出した情報に基づいた内容ゆえ、発売中止に至った実情は知るよしもありませんが、少なくとも本書により埋もれていた数々のゲームたちを白日の下にすることは、テレビゲームの黄金期を別の側面から映し出す役割を果たすことになるでしょう。(Re)

「スーパーファミコン&ゲームボーイ発売中止ゲーム図鑑」鯨武長之助 著 三才ブックス 1980円(税込)

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