セガのゲームは世界いちぃぃぃ!(全3巻)

 あなたにとって、思い出のゲーム機は何でしょうか。「セガのゲームは世界いちぃぃぃ!」(以下、本書)は、かつてのセガハードを主役にし、「セゲいち」の略称でそのギリギリなネタと下品なノリが一部の読者に人気を博した漫画の電子書籍版です。


セガまんが吉松くん

 本書は1998年から2007年までセガゲーム専門誌など掲載先を変えて連載された漫画の単行本で、「この本は次世代機抗争勃発以降の裏ゲーム史である」(本書1巻裏表紙)と、あの頃のゲーム機を取り巻く環境を(セガに関するネタを中心にして)描いたものです。

 ドリームキャストをキャラクター化したドリームキャス子(以下、キャス子)、メガドライブ(メガドラタワー)をキャラクター化したメガドラ兄さんなど、セガ製ゲーム機キャラがセガの復権を目指し他のゲーム機をも巻き込んで奮闘する、との言葉では語りきれないカオスな持ち味の漫画となっております。

自虐ネタ戦記、無情

 セガ好きが描いたならば、セガを褒め称えるかと思えばさにあらず。

  • 「たとえハードが非力でも努力と根性とちからワザでなんとかする心いきこそセガ魂」(本書1巻030ページ)
  • 「さすが我らの血をひく者 みごとな逃げきり先行しっぱい!」(同060ページ)
  • キラ星のごとく輝くクソゲーだらけで」(本書3巻024ページ)
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 などなどセガマニアならではの自虐ネタにあふれており、マニアック過ぎて分かりづらいネタにも著者による解説が入り、よりわかりにくくなることも。

 本書各巻の書かれた時期は、

  1. ドリームキャスト発売前夜の98年〜PS2発売前夜の99年
  2. PS2発売以降の99年〜ドリームキャスト生産終了の2001年
  3. セガがソフトメーカーに転身してからの2002年以降

 と、セガにとって重要な時期と重なっており、その内容で当時の流れがおおむねわかるようになっております。

セガよりも尊い場所

 さらに「銀河鉄道999」「機動戦士ガンダム」著者が当時ハマっていた「燃えろ!ロボコン」「パワーパフガールズ」などパロディも豊富。見ていない映画もネタにするのでさらにカオスな漫画になります。

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 その延長で本書1巻では「燃えろ!ロボコン」でロビーナを演じた加藤夏希との対談コーナーがあったり、3巻ではモーニング娘。に関する記述が増えたりと(デフォルトにプロレスネタが見られるように)、著者の推しにまつわる部分が本作の多くを占め、ゲーム機もその一つと言っていいでしょう。

 そんな著者の本業はアニメーターであり(作中でも自分の仕事を宣伝しているように)、アニメ「宇宙よりも遠い場所」でキャラクターデザインをするなど数々の作品を手掛け、その仕事とのギャップが本書の魅力かもしれません。

グッバイ、ゲーム機’s

 「これからのゲームは携帯でじゅーぶん」(本書3巻074ページ)な時代になって早幾年。本書も現在見ると「ゲーム業界予言マンガの面目やくじょ」(同077ページ)な部分が垣間見られ、「DCタン」(同107ページ)のように(キャス子とまた違った)擬人化が世を席巻する時代を予見していた…と考えるのは穿ちすぎでしょうか。

 巻末の「帰ってきたメガドラ兄さん」で著者の持つゲーム機たちが罵り合いながらも仲良く暮らす姿は微笑ましいと同時に、彼らが活躍した日々が過ぎ去った寂しさも感じられます。本書でゲーム機競争が熱かった時期を思い出してみるのも良いのではないでしょうか。

「セガのゲームは世界いちぃぃぃ!」(全3巻)サムシング吉松 著 SBクリエイティブ 880円(1巻)1045円(2、3巻)

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