仮面ライダーやスーパー戦隊と並んで日曜朝の顔となった「プリキュア」シリーズ。「プリキュアコスチュームクロニクル」(以下、本書)はその歴代ヒロインの衣装を中心に、20年にわたる歴史を俯瞰する一冊です。

衣装で綴るプリキュア図鑑
本書は、2004年放送「ふたりはプリキュア」から23年放送「ひろがるスカイ!プリキュア」までに登場した総勢78人の「伝説の戦士」プリキュア図鑑です。15周年記念版ではCGを使っていましたが、本書は描き下ろしイラストを用いて各キャラのコスチュームを解剖する形で紹介しています。
「魔法使いサリー」「美少女戦士セーラームーン」など魔法少女や戦うヒロインの系譜を受け継ぎ、20年にわたって様々な悪と戦い、女の子のあこがれとなってきたプリキュアたち。本書では制作者のインタビューや関連商品の写真も集めてこれまでの歴史を紐解いていきます。
ぶっちゃけありえない!初代プリキュア
その中でも「ふたりはプリキュア」(以下、初代)の登場は大きな意味があります。主人公のイメージカラーが黒と白だったのは(続編「ふたりはプリキュアMAX HEART」で登場するシャイニールミナスが女の子向けの定番カラーだったことを思えば)かなり攻めたデザインでありました。
本書でもその経緯がプロデューサー、ディレクターなどの口から語られます。「最初はゴスロリの魔法ものみたいなイメージがあって」(本書163ページ)黒と白の配色があり、そこから現在の姿になるには随分と苦労があったようです。少なくとも徒手空拳で戦う女の子向けヒロインはこれまでありえなかったといえるでしょう。
時代を反映するプリキュアの姿
そんな拳や足技を使うプリキュアゆえに、そのコスチュームは手をガードするデザインが取り入れられているように、シリーズ通してのパターンがあります。反面、初代の足元はルーズソックスを思わせるものになっているように、その時代を反映したデザインがうかがえます。
以降も、東日本大震災の後にカラフルさで癒やしを与えた「スマイルプリキュア!」ディズニー作品のプリンセスを参考にした「GO!プリンセスプリキュア」、宇宙人をメンバーに加えて多様性をテーマにした「スター☆トゥインクルプリキュア」など、そのテーマの歴史を俯瞰することでより時代性を感じられます。
勇気と愛をこれからも
それでも共通しているのはプリキュアたちが「自分の足で凛々しく立つ」(本書234ページ)こと。作中の悪は身近な問題の反映であり、それに立ち向かう勇気と支えになる仲間との友情が作品の根底にあります。日常生活と地続きな世界観の描き方は、メイン視聴者の女の子に20年も支えられた理由なのかもしれません。
お菓子や看護師、アイドルなど女の子の興味を引くモチーフを用いてマンネリに陥ることなく続いてきたのは、主人公を14歳の女子中学生としながらもメンバーに年上や異世界人、更には(限定的ながら)男性も加えるなど様々な試みを模索してきた結果なのでしょう。親子で楽しめるコンテンツとしてスピンオフや続編が作られる程に成長したこのシリーズをこれからも見守りたいものです。
「プリキュアコスチュームクロニクル」東映アニメーション 監修 講談社 2420円(税込)