子供時代、デパートのおもちゃ売り場にあるショーウインドウに並んだ超合金などは、いつでも心惹かれるものでした。「無敵の王者 ポピーMemorial」(以下、本書)は一時代を築いた玩具メーカー・ポピーが発売した玩具たちの写真を収録した一冊です。
無敵の王者 ポピー Memorial税込4,950円(2024/05/27時点)大人気のキャラクター玩具メーカー、そのすべて
本書は玩具メーカー、ポピーが発売した玩具を集めたものです。50年前に発売された商品で現存するものを使用しているため全てとはいきませんが、70年代生まれの子供には憧れの的だった玩具が一同に会する様は、当時を知る者にとって感慨深いものがあります。
ポピーはバンダイ(当時)の子会社として1971年に設立、83年バンダイに合併するまでの12年間に多くのヒット商品を生み出し、「キャラクター玩具」を成立させた玩具メーカーです。設立当初「それまで、テレビキャラクターの廉価玩具をメイン商材としていた」(本書084ページ)ポピーは、画期的な商品を発売して玩具メーカーのトップに躍り出ます。
巨大、合金、なりきりアイテムの三本柱
それは特撮作品「仮面ライダー」に登場する「変身ベルト」。「光る、回る」を売りにし、作品の人気と相まってごっこ遊びに欠かせないなりきりアイテムとなりました。次に72年放送の永井豪原作のアニメ「マジンガーZ」のヒットに併せて、後発ながら樹脂製の巨大な玩具「ジャンボマシンダー」を73年に発売。
そして「マジンガーZ」設定上の金属から名付けられた合金製フィギュア「超合金」を同時に発売します。いずれも空前の大ヒットを記録し、積極的な広告展開でポピーはさらなる知名度を獲得することになります。当時 プラモやソフビ人形が主力だった中、それらは他社が追随するほどキャラクター玩具のあり方を一変させた商品たちでありました。
子供に向けたマニアックな商品
さて、そんなポピー商品の何が子供を惹きつけたのか。先の3アイテムに共通するのは「劇中の再現」に集約されるでしょう。変身ベルトの実物に近づけたディテール、ジャンボマシンダーの巨大感、そして超合金の合金ならではの重量感。いずれもテレビに映る実物を感じさせる作りが「自分も手に取りたい」と子供に思わせる秘訣だと思われます。
もちろん、変身ポーズを取り始めたのが仮面ライダー2号からにも関わらずベルトのカラーリングが旧1号のものになっていたり、名前が書かれたシールを貼り付けていたり、劇中にはないミサイル発射ギミックがあったりと玩具ならではの甘さはあれど、基本的には極力劇中のディテールを再現した作りになっていたのです。
さらに、「がんばれ!ロボコン」の超合金では登場するロボットのほぼすべてを商品化し、ジャンボマシンダーでは「マジンガーZ」の機械獣、「仮面ライダーV3」のデストロン怪人を同サイズで商品化するなど、マニアックな商品展開を実現できたのはトップに立った強みでしょうか。
どっこい、ポピーは生きている
そんな快進撃の中で、「勇者ライディーン」「大鉄人17」での変形機構、「超電磁ロボコン・バトラーV」(フィリピンで人気の)「超電磁マシーンボルテスV」での5体合体など玩具のギミックは複雑化し、良くも悪くも玩具メーカー主導でロボットアニメを制作する体制が確立するわけですが、超合金の開発を担当した村上克司に言わせれば「子供に嘘をつかない。紛い物を作っちゃいけない」(本書109ページ)がゆえの結果だったのかもしれません。
「喋る、歌う」が売りになったとはいえ、変身ベルトは仮面ライダー玩具の主力商品であり続け、「超合金魂」はもちろん合金パーツを使用した玩具には「超合金」の名が与えられ、半世紀の時を超えてジャンボマシンダーが復刻されたように、ポピー製品の志は現在も息づいています。
今に続くキャラクター玩具の先駆けとして、また80年代のガレージキットに始まるリアリティ志向の先達として、ポピーの玩具はその道筋を切り開いたといえるでしょう。
「無敵の王者 ポピーMemorial」ホビージャパン 4950円(税込)