カロリー別女性フィギュア塗装レシピ

 模型を嗜む女性が増えている昨今でも、まだまだ多い男性モデラーが抱える問題が女性フィギュアの塗装法。「カロリー別女性フィギュア塗装レシピ」(以下、本書)は一番流通しているであろうフィギュアキットを使って塗装を解説する一冊です。


フィギュア塗装におけるカロリーとは?

 本書はフィギュアを塗装するにあたって「『手数』や『工程』といった模型的熱量を全部まとめてこの『カロリー』というキーワード」(本書006ページ)で表現したものです。つまり食べ物の熱量になぞらえて、手間のかからない塗装を「低カロリー」、より手を掛ける塗装を「高カロリー」と定義しているのです。

 本書ではカロリー差を明快にすべく、タミヤ製「キャンパスフレンズセットⅡ」を用いて塗装例を示しています。同キットは自動車モデルに合わせた1/24サイズで大学生を模したプラモで、本書では組み立て前のランナー状態の写真も掲載、約40年ぶりのリニューアルに見合った最新技術が詰め込まれているキットであります。

女性フィギュアはメイクするように塗るべし

 本書ではキット中の女性フィギュアを用いて塗装しますが、リアルタッチの造形である以上、実際のメイクを参考にすると効果的。ゆえに本書では「知っておきたいメイクの基本」(本書010ページ)と題したページを設け、その基礎知識をコンパクトにまとめています。

 低カロリーの塗装では、3Dスキャンされたキットの特性を活かして陰影をつけない方法を採用しておりますが、顔に関しては肌の下地や眉、唇などメイクを施すように色味のバランスに留意した塗装工程を分解写真で丁寧に解説しています。

同じフィギュアでも塗装でこんなに違う

 これが高カロリー塗装になると、肌のムラや陰影を再現するため層をなすように複数色を使い、実際にメイクを施すようなきめ細かい塗装工程を経たものになっています。ただ、どちらが良いかというよりメインに据えたいのか、他キットの添え物にするのか、という用途に応じた違いと見るべきでしょう。

 また、キットに同梱されている男性の頭部パーツを使って人種の違いを塗装だけで再現、「塗装でどれだけ人種の雰囲気が変わるか」(本書057ページ)がよくわかるでしょう。さらに後半の中カロリー塗装例ではシースルー表現、デニムパンツの質感再現など特殊な塗装法を紹介しています。

塗装の達人、その一端を見せる

 本書における作例で忘れてしまいがちですが、各フィギュアのサイズは体高10センチにも満たない小さいものです。それを感じさせないのは先のメイクに関する知識と考え抜かれた配色、「何より大切なのは完成形のイメージを先に固めてから」(本書025ページ)との信念でありましょう。

 著者はプロとして幾多の作品を仕上げてきた人物。しかしここで明かされている技法は探求の結果到達した比較的真似しやすいものであります。タイトル通り「レシピ」と捉えて、ここから応用を利かせてみるのも一興でしょう。

「カロリー別女性フィギュア塗装レシピ」國谷忠伸 著 大日本絵画 2970円(税込)

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