オリジナルビデオアニメ80’s

 今でこそ有料で配信されるアニメも珍しくはありませんが、40年前にその原型があった、というと信じてもらえるでしょうか。「オリジナルビデオアニメ80’s」(以下、本書)は昭和の時代に生まれたオリジナルビデオアニメ(以下、OVA)を紹介したものです。


40年前に生まれた日本独自のアニメ

 アニメブームが起き、ビデオデッキが普及し始めた80年代、OVAは生まれました。これまでのスポンサーからの出資によって作られるテレビアニメと違い、作品そのものを商品として売るOVAは当時のアニメファンに向けて作られ、後の深夜アニメにつながる日本アニメの裾野を広げたといえるでしょう。

 本書は83年に作られた初のOVA「ダロス」をはじめ、80年代に制作されたOVAを紹介したものです。権利関係上、一部の作品しかビジュアルを載せていないのでイメージをつかみにくい部分もありますが、現在では視聴することが難しい作品も網羅しており、資料的価値は大きいと思われます。

テレビの補完、原作つき、テレビではできないこと

 OVAの作品数は多くその特徴を定義するのは難しいのですが、傾向はだいたい3つに分けられます。

  1. テレビアニメを補完するもの
  2. 原作つきのもの
  3. 完全なオリジナル

 1.に関してはアニメブームだった当時打ち切りの憂き目にあった作品も多く、「蒼き流星SPTレイズナー」「超獣機神ダンクーガ」のようにOVAで完結させた作品や、逆に「機動戦士ガンダム」「装甲騎兵ボトムズ」など人気作品のスピンオフを制作するパターンがありました。

 中でも特筆すべきは3.に当たる作品。当時はアニメクリエイターを前面に押す傾向のためか、名のあるアニメーターが自由に制作した作品があり、金田伊功の「バース」、湖川友謙の「グリード」などがそれに当たります。また「トップをねらえ!」を監督した庵野秀明、「破邪大星ダンガイオー」で作画を担当した大張正己など、OVAが出世作となったクリエイターも多くいます。

ビキニアーマーよ、永遠なれ

 先の「トップをねらえ!」のように、OVAでは美少女とメカの組み合わせが定番でありました。そのOVAに登場する美少女を代表するアイテムといえば「ビキニアーマー」(当時この言葉はなかった)でありましょう。

 露出度の高い鎧であるビキニアーマーは、もとを辿ればイラストレーターのフランク・フラゼッタなどによる西洋のヒロイックファンタジーにおける女性イメージをもとに(と思われる)、OVA「幻夢戦記レダ」(以下、「レダ」)のヒロイン・朝霧陽子が着用したものが祖と考えられます。

 本書のイラストコラムにあるように、ビキニアーマーに準じた衣装を身に着けたOVAのヒロインは多く、「レダ」のフォロワーであるゲーム「夢幻戦士ヴァリス」や「ドラゴンクエストⅢ」の女戦士など、OVAに限らず80年代美少女のトレンドとしてビキニアーマーがあったのです。

OVAはパンクなのか?

 90年代までOVAは存在していたものの、現在では1.のような既存アニメ作品の特典という形が多くなり、純然たる創作としてのアニメは個人制作にその座を明け渡す形になっています。そういう意味でも自由度の高いアニメが流通していた80年代のOVAはかなり特殊な状況だったといえるでしょう。

 そして本書を制作したのがアニメ専門誌ではなくパンク専門誌であったのは、OVAに「まさにパンクに通じる荒々しいエナジーに満ちたもの」(本書208ページ)を感じたがゆえであり、副題の「テープがヘッドに絡まる前に」が示すように、OVAが忘れさられるのを危惧した結果であります。

 現在の日本アニメを見渡してみれば原作つきが圧倒的に多く、オリジナル作品は数えるほどしか見当たりません。はるか以前に作られたOVAの採算度外視で(ものによっては)トンデモな作品の数々を本書でのぞいてみてはいかがでしょうか。(Re)

「オリジナルビデオアニメ80’s」MOBSPROOF編集部 編 出版ワークス 1980円(税込)

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