模型のメディア論 時空間を媒介する「モノ」

 ガンプラが発売されて40年、RX-78ガンダムのプラモデルだけでもHG、MG、PG、FGなど数多く作られています。仕様も造形も一つとして同じものがないのに、すべてRX-78をかたどったものと考えると、少し不思議な感じがします。
 その感覚の答えになるわけではありませんが、模型の持っているメディアとしての側面を考察したのが「模型のメディア論 時空間を媒介する『モノ』」(以下、本書)であります。

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模型の歴史と伝えられたモノ

 本書は、模型というものが「『あるモノが特定のメディアとして形成される』」(本書21ページ)過程を明らかにするために、近代日本に生まれた模型の歴史を追う「メディア考古学」という方法を使って編まれたものです。

  一口に模型といっても様々で、プラモデル以前には木を加工するソリッドモデル、それより前には雛人形まで遡ることになりますが、素材が変わるとともに模型が内包するものも様々に変わっていきます。

機能を再現する模型から外観を再現する模型へ

 本書によれば、戦前における模型というのは模型飛行機や鉄道模型など実際に飛んだり走ったりするものがほとんどで、発明の試作品という趣の「科学模型」という位置付けでありました。戦中になると、少国民に対する戦意高揚の意味づけが大きくなります。この時点でも実際に飛行する模型飛行機など、見た目より機能が重視されているのがうかがえます。

 さて、戦後になってプラスチック製のいわゆるプラモデルが普及するにつれ、動くギミックを備えた模型よりも外観の再現に重点を置いた模型が増えていきます。そして60年代から70年代にかけて田宮模型が発売した、戦車や兵士などのスケールモデルによってその方向性は加速していきます。

 そして80年代、ガンプラブームが起こりプラモデルの主軸が漫画やアニメに登場するメカなどを立体化した、いわゆるキャラクターモデルに移っていきます。本書では、「先にスケールモデルで形状の正確さと解釈の楽しみの弁証法が見られたが、同時にそこでは『歴史的事実』に基づくことの限界が意識されていた」(本書142ページ)ことによりスケールモデルからキャラクターモデルに移行したと考えています。

お台場ガンダムの「機能」

 ガンダム誕生から30年を記念して、お台場に建造された全高18メートルの実物大ガンダム像は大きな話題となりました。実在しないものをリアリティを持って造形したこの建造物はある意味究極のキャラクターモデルと言えるかもしれません。

 本書では、「『ガンダム』というメディアコンテンツの『潜在的に集合的な記憶』を、実物大ガンダム像という物的環境によって、来場者が『顕在的に集合的に想起』することを意味する」(本書168ページ)とし、「模型メディアが記憶の媒介性を持つ」(本書173ページ)ことの一例としています。

 平たく言えば、実物大ガンダム像がそれを見た人々に「ガンダム」という作品の記憶を呼び起こす機能をもっていると考えられます。

模型の持つ超時空的機能

 前述したように、戦前の模型が「発明の試作品」、つまりいまだ存在していないものを模型にしていました。そして戦後、現実に存在する乗り物などを立体化するスケールモデル、のちに想像上のものを立体化したキャラクターモデルと、時代によって模型は未来や過去の存在を立体化しています。

 共通しているのは、模型が「実物」というものを念頭に置いた存在であり、作る人が実物のもつ情報を読み取る、もしくは情報を盛り込めるという点にあります。

 模型とは「『モノ』と密接な関係を取り結ぶメディア文化領域」(本書233ページ)と定義され、それを作る人と模型の対象とされる「モノ」の間で様々に意味を変えながら繋がりを作っていくものなのではないかと考えられます。

 正直なところ本書後半のメディア論に関する記述に関して、今ひとつ理解しているとは言えませんが、模型の歴史とそのメディアとしての考察は興味深く読ませてもらいました。

「模型のメディア論 時空間を媒介する『モノ』」松井広志 著 青弓社 3000円+税

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